認知症ケア


〈デイサービスの現状〉

 "ひとたび介護サービスを利用し始めると、それまでにあった地域との関係から切り離され、つながりや交流の機会が極端に少なくなってしまう"

 介護の現場でよく耳にする話です。

 自治体から介護認定を受け、デイサービスなどの公的な介護保険サービスの利用を開始。すると、1日の大半を施設のなかで過ごすようになり、地域に出てくることがなくなる。そして、"地域の人には介護認定を受けたことを知られたくない"といった意識も働き、サービスを利用しない日であっても自宅に閉じこもりがちになる。その結果、社会的孤立を深めていってしまう。

 そんな悪循環が、利用者、それにサービス事業者の間で愚痴やあきらめの色合いを帯びて語られているのです。

 本来、介護サービスとはそういったものではないはずです。国は、最期まで住み慣れた地域で暮らし続けることを謳って"地域包括ケア"を推し進めています。そして、通所介護(デイサービス)の目的の第一に、「利用者の社会的孤立感の解消及び心身の機能の維持」と定めているのです。昨年、制定された認知症施策推進大綱にも、大きな柱として"社会参加"が明記されています。

 それにも関わらず、施設のなかで1日を過ごし、運動や手習いなどはするにしても、地域に出て社会とつながり様々な活動をするデイサービスはあまり見られないのが現状です。

〈介護保険制度の課題〉

 では、なぜ、介護サービスにおける社会参加がそれほど難しく、なかなか進まないのでしょうか。
ここには、介護保険制度がそもそも抱える大きな課題、そして、日本の福祉というものがその歴史からさかのぼって持っている根本的な文化の問題が潜んでいます。

介護保険法における通所介護は、その目的の第二に「利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図る目的」と記されています。つまり、介護保険の被保険者は利用者その人であり、サービスは個人に提供されるにも関わらず、家族の負担軽減が大きな目的のひとつとされているのです。

 そのような状況下では、通っている施設のなかでどういった過ごし方をするのか、本人の視点からではなく、"できるだけ安全に、食事やお風呂などのサービスをして欲しい"という家族の視点が大きくならざるを得ません。

 また、介護保険サービスが始まる前の高齢者福祉は、基本的に行政の措置によってなされる施しのサービスでした。そこには、"お世話をする−される"の関係が明確に存在し、サービスを受ける個人としての権利の視点は希薄でした。

 "支援"という言葉の裏にある思想には、そうした歴史的な色合いが色濃く残っているのは確かでしょう。

〈DAYS BLG! の活動〉

 いま、そうした現状に対して、サービスを利用する本人たちから、異を唱える声があがっています。

 「なんのためにここに通うのか」「子どもじみたことはしたくない」と、自分が社会とつながり生きがいを見いだせる場を求める人が増えています。

介護サービスにおける社会参加活動は、地域にも劇的な変化をもたらします。

 これまで、介護や認知症といったことに否定的な感情を持っていた地域の人々は、目の前で活動する姿を見て認識を変えるでしょう。

 通所介護施設にある「駄菓子屋」にお菓子を買いにきた小学生たちは、そこにいる人たちを「認知症の人」とは見ないでしょう。いつもの駄菓子のおっちゃん・おばちゃんが、たまたま認知症を持っていたに過ぎないのです。
こうした地域にもたらすインパクトは、超高齢社会日本の未来を左右するほどの大きな違いを生み出す可能性を秘めています。

 東京町田にあるデイサービス「DAYS BLG!」は、全国に先駆けて地域での有償ボランティアを始めるなど、"ハタラク "デイサービスとして注目を集めてきました。


そこに通う認知症のある人たちは、利用者とは呼ばれず、職員と同じ"メンバー"と呼ばれます。

 そこには、"お世話する−される"の関係は存在しません。一緒に活動をつくっていく仲間なのです。そして、HONDAの販売店での洗車、子どもの国のベンチ拭き、学童保育での紙芝居の読み聞かせ、コミュニティ誌のポスティング…etc、に日々出かけていき、地域に必要な活動の一翼を担っています。

 そこでは、メンバーたちは、いつもおっちゃんおばちゃんなのであり、決して、「デイサービスの利用者」ではないのです。単なるデイサービス施設の枠を超えて、本人の想いと地域をつなぐハブとしての機能を担っているのです。

〈認知症フレンドリーな社会を目指して〉

 2019年4月からは、こうした拠点(選択肢)が全国にあることで日本を認知症フレンドリーな社会へと風景を変えていくため、"100BLGプロジェクト"(全国に地域の拠点としてのBLGを100つくっていく)が始まり、賛同者を増やしています。

 そして、「ポスト2020の介護事業と地域共創」と題したシリーズのオンラインセミナーをスタートさせています。

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 オンラインセミナー「ポスト2020の介護事業と地域共創 介護事業を通じた社会参加の進め方「つながる 役割 ハタラク」 濵田桂太朗氏(株式会社ユニティ代表)x前田隆行(100BLG株式会社代表)」の詳細はこちら
→ https://100blg20210123.peatix.com/
(問い合わせ:100BLG株式会社 info@100blg.org)

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〈読者へのメッセージ〉

 大事なのは、"その日1日を終えたときに、どんな1日だったと思えるか"ではないでしょうか。

 やはり私たちは、"誰かの役に立った""喜んでくれた"という時に「いい1日だった」と思います。敬意を持って接してもらえば、充実感につながります。そうした1日1日を積み重ねていくこと。毎日をやりきること。生き抜くこと。これからの介護サービスに決して欠かすことのできない視点です。

 それをもたらしてくれるのが"社会"であり"地域"なのです。人は決してひとりでも生きられないのですから。