1.はじめに
「2021年の介護保険法改正&介護報酬改定は、あまり大きな改正にはならないのではないか」という声が多く上がっています。そのような声もあながち間違いではないと思いますが、国が進めようとしている施策の「下準備」は着々と進んでいます。2021年は2024年の法改正に向けた『準備改正』といった意味合いが強い改正となる可能性が高いでしょう。
介護事業を時流に乗せるためには、改正の内容もさることながら、その背景となる国の思惑も読み解いていく必要があります。今回はその第1回目として、2021年の改正に向けた大きな流れについて触れていきたいと思います。
2.2021年改正は小幅な見直しか?

2021年法改正の概要は表1に示した通りです。大きな目玉であった「要介護1、2利用者の総合事業移行」や「利用者自己負担割合の引き上げ」は今回見送られました。ここが2021年の法改正は小幅な見直しと言われる大きな所以でしょう。
〈「通いの場の整備拡充」の意図〉
しかしながら、「総合事業の対象者の拡大」や「通いの場の整備拡充」は、明らかに通所介護の対象者から要介護1、2の利用者を切り離す準備と言えます(資料1)。

特に「通いの場の整備拡充」に関して、国は力を入れようとしています。要介護者の総合事業利用を促進しつつ、通いの場が十分整備されたのちに、通所介護から要介護1、2の利用者を切り離す可能性が非常に高いと考えられます。おそらくは2024年の法改正で実施されるでしょう。
通所介護事業者はこのような流れを把握しつつ事業運営を進めていく必要があるでしょう。
〈「ADL維持等加算」の算定施設が増加?〉
また、介護予防インセンティブも更に拡充される可能性が高くなっています。
前回の法改正では、介護予防に関する加算として、通所介護にADL維持等加算が新設されました。しかしながら、その算定率は2.38%(令和2年4月サービス提供分)と非常に低い数値となっています。
国の主張としては、「1年間で1.5倍以上に算定施設が増加した」(図1)とありますが、そもそもの算定率が低すぎるので苦しい見解と言えます。

ただし、算定率を強調せず、「算定施設が増えていること」を強調していることは、着目に値するかもしれません。今後、算定施設を更に増やすために、「ADL維持等加算」の算定要件緩和や単位を上乗せしてくる可能性は十分あります。
また、全く別の介護予防に関する加算が新設される可能性も高いと言えます。通所介護事業所は実際に算定できなくても、バーセルインデックスを用いた評価を実施するなど、ADL維持等加算の拡充や更なる介護予防に関する加算算定の準備は進めておいた方が良いでしょう。
〈資料から読み取る「国の既定路線」〉
審議会資料等を読んでいると「介護保険サービスの適正化、重点化」という文言を非常に多く目にします。これは、最終的に介護保険給付は要介護3以上の利用者に限定するのが国の規定路線であることを意味しています。
要介護3以上の中重度者へのサービス提供が中心になっていくということは、終末期ケアを充実させていくことも必須となっていくでしょう。既に国は病院のベッド数を減らし、病院での看取りを減少させつつ、高齢者住宅を含めた介護施設での看取りを拡充させる政策をとっています。
前述した「介護予防の観点」と「看取りケアの促進」は、今後の法改正の中心になるのは間違いないでしょう。
〈看取り機能の強化〉

サービス付き高齢者向け住宅の看取り率も22.4%と向上しています(図2)。特養や介護医療院はもちろんですが、サービス付き高齢者向け住宅や介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホームでも、今後看取り機能を強化していくことは必須と言えるでしょう。
特にサービス付き高齢者向け住宅では、「まだまだ元気な高齢者が入居するところ」という意識が事業者側の間でも強いように感じます。上述のように、今後は要介護3以上の方に介護保険サービスを重点化する方向へと国が誘導していることを考えると、今のうちからサービス付き高齢者向け住宅の入居者も「中重度者」をターゲットにしていき、看取り機能を強化することが必須であると言えるでしょう。
今回は2021年法改正の大枠の解説をさせていただきました。次回以降、最新の審議会情報などを織り交ぜながらお伝えしてまいります。 |