1.介護事業経営実態調査の概要
令和2年度介護事業経営実態調査の結果が公表されました。介護報酬改定では、毎回この調査結果(収支差率)を元に報酬単価が決定されますので、介護事業者にとっても非常に関心の高い資料です。

結果は、収支差率が全体でマイナス0.7%と非常に厳しい数値となりました。ほとんどの介護サービスで収支差率がマイナスとなっています。しかも、この調査期間は本年3月度の決算数値ですので、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言後の数値は反映されていません。
新型コロナウイルス感染症による利用者の利用控えにより、通所介護事業所が大打撃を受けたことは皆様もご承知の通りです。しかし、この調査結果にはそういった数値はあまり反映されておらず、現在は更に悪化している可能性が高いといえます。
多くの事業所が「新型コロナウイルス感染症の流行後に収支が悪化している」と回答していることからも、影響が甚大であることは間違いない状況です。

特に、通所サービスへの影響が大きいことがわかります。
比較的中重度の利用者が多い事業所は、レスパイトニーズが高いこともあり、新型コロナウイルス感染症の影響はそれほど大きなものではありませんでしたが、軽度の利用者が多い事業所では、利用者の「利用控え」が顕著で非常に大きな影響を受けました。
一方で、訪問介護事業所では影響が少なく、サービス付き高齢者向け住宅に併設している訪問介護事業所では、入居者が通所サービスを利用控えした結果、一時的に訪問介護のサービス供給が増えたという事業所も多々あります。
このように、経営実態調査後の経営数値を追っている資料を厚労省が公表すること自体異例です。2021年介護報酬改定は、これまで通り経営実態調査の結果のみを踏まえて介護保険給付単価を決定するのではなく、新型コロナウィルス感染症の影響も加味したものになるであろうことは想像に難くはありません。
2.2021年介護報酬改定はプラス改定!?
経営実態調査の結果も含め、収束のみえないコロナ禍の影響もあり、2021年介護報酬改定はほぼ間違いなく「プラス改定」になるという期待が強くなっています。これまで経営実態調査の結果から改定率を決定してきたことから考えても、その可能性は高いでしょう。
しかし、一度立ち止まって考えてみていただきたいのです。2018年の介護報酬改定は0.54%のプラス改定でした。それにもかかわらず、経営実態調査の結果で、多くの介護サービスの収支が悪化しています。
コロナ禍の影響を大きく受ける前にも関わらず悪化しているのです。これはなぜなのでしょうか。
理由は大きく2つあります。
〈人件費の高騰〉
1つは人件費の高騰です。平成30年度決算と令和元年度決算を比較して、全介護サービスで収入に対する給与費割合が0.4%増加しています。

介護事業は深刻な人手不足にあり、スタッフ確保のための投資を増やさざるを得ない構図が浮き彫りになっています。
資料を見ると、各介護サービスの支出のうち「委託費」が増えていることがわかります。これは、派遣スタッフや人材紹介の利用が増加した結果でもあります。
多くの介護事業所が高騰し続ける人件費に苦しんでいるのは間違いありません。
〈介護報酬単価の減算〉
2つ目の理由は、根本的に介護報酬単価が減算されていることです。繰り返しますが2018年介護報酬改定はプラス改定でした。それにも関わらず、なぜ減算なのでしょうか。
その答えは「加算単価」にあります。このプラス改定の内訳は、「新設・拡充された加算で約プラス1%」、一方で通所サービスの時間区分変更や訪問介護サービスの同一建物減算拡充などの「適正化で約マイナス0.5%」となっており、これらを引き算した結果プラス0.54%となっているのです。
つまりは、加算を算定できなければ実質減算となってしまうわけです。
本連載の第1回でお伝えしたように、これら新設・拡充された加算の算定率は、非常に低い数値となっています。加算が算定できないので、実質減算となってしまっているのです。
「支出(人件費)が増え、収入(介護報酬)が減る」という2つの理由により、多くの介護サービスが厳しい収支差率となっています。そして、このように基本報酬を減算して、加算報酬単価を上げるやり方を2021年介護報酬改定でも踏襲する可能性が高いのです。
加算は国が誘導したい方向に新設・拡充していきます。加算算定の重要性は、2021年介護報酬改定以降も増していくのは間違いない状況といえるでしょう。
3.まとめ
2021年介護報酬改定がプラス改定になる可能性は高いです。しかしながら、社会保障費を抑制したいというのが国の本音です。
2021年介護報酬改定も上述の通り、まやかしともいえるプラス改定となる可能性も十分考えられます。2021年改定のみならず、今後の介護報酬改定を見据えて、少人数スタッフでの運営と時流に乗せた介護サービス提供(加算算定)を今のうちから強化していきましょう。
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