1.はじめに
今回で「介護リーダーのお仕事」と銘打った全6回の連載を終える事となった。
ここまで、第1回介護リーダーの役割⇒第2回介護リーダーの使命⇒第3回介護リーダーに必要なスキル(コンセプチュアルスキル)⇒第4回介護リーダーに必要なスキル(ヒューマンスキル)⇒第5回介護リーダーに必要なスキル(テクニカルスキル)と順序立てて述べてきたが、最終回の今回は各リーダーに於ける必要な各スキルの具体例を述べてゆく。スキルの具体例は特に、対応の難しいトラブルの事例を通して述べてゆく。なぜならばトラブルの解決には多くのスキルを必要とするからである。
リーダーのスキルを発揮するに当たり、トラブルを解決する為に必要な基本的心得は以下の3つである。
一、当該者の話を傾聴し、周囲の状況をよく観察し、問題やトラブルの原因となっているものは何かを探ること。 |
話を傾聴する際は周囲の状況をもよく観察し当該者の感情に惑わされず、当該者の潜在的な意識の問題や、周囲の潜在的な問題にも気を配りトラブルの原因を分析する。
二、その問題は原理原則に反していないか。また職務権限内で処理できるのかを分析すること。 |
原理原則とは、業務に於いては介護に掛かる原理原則や科学であり、労務に於いては就業規則や法、道徳(常識)等などである。また職務権限内で処理できるかという事は、リーダーの職務記述書に記載されている職務権限内か否かという事である。処理できないことは一人で抱えず、上司に相談する姿勢が重要である。
三、解決は公平・中立に行い、裁くことを目的とせず、当該事案が円満かつ維持・発展するよう分析し働きかけること。 |
公平・中立で裁かずとは、原理原則に基づかれている行為であるならば、正解を求めない姿勢が大切で、円満かつ維持・発展するよう落としどころを見出す事である。
原理原則に基づかれていなければ、裁くという意識ではなく教育によって修正し、あるいは説明責任を果たす事によって円満かつ維持・発展するよう解決してゆく必要がある。
この時リーダーは、感情に流されることなく、不必要に問題点や理屈を挙げ連ねず、問題やトラブルの核心に焦点を当て、強い意志を持って解決に当たる姿勢が何よりも重要である。
2.トップリーダーの例
1)トラブル発生時のコンセプチュアルスキル(概念化能力)発揮例
【給料が安いと訴えてきた!】(ES従業者の満足対応)
まずこのような訴えの場合、相対的価値観による不服なのか、絶対的価値観による不服なのかを探る必要がある。
「同期の○○さんの給料が私より高いのはなぜですか?」「他の介護事業所の介護職は¥○○はもらっているのに、この事業所はなぜ低いのですか?」など、他人や他の法人と比較した相対的価値観に基づく訴えには毅然とした対応が必要である。
このような訴えは、羨望(せんぼう)、妬み(ねたみ)、嫉み(そねみ)等様々な感情から生じると考えられるが、そもそも給与の額というものは、就労の原理原則である就業規則(給与規程・賃金テーブル)に基づき、雇用契約によって法人と個人とが契約を交わしたものであり、感情的に決められたものではないので、訴えてきた人の感情に振り回されず、きちんと原理原則に基づき説明責任を果たすことが大切である。
説明責任を果たさず、「給料の事は事務長に聞いてください」等と、門外漢の立場をとるような無責任な態度はトップリーダーとしての資質を問わざるを得ない。なぜならトップリーダーが人事・業務管理を預かる際には、人員(人件費率)の管理、昇給・賞与査定、人事勤務評価等で介護士給与の把握が必要不可欠な筈だからである。
また対応時、「あなたは就職時、その金額で納得して雇用契約を結んで働いているのだから仕方ありません」等と、当該者の感情を受け止めない形式的な対応も感心しない。このような対応では当該者との信頼関係を紡げず、「円満かつ維持・発展する」という心得に反するからである。
このような場合、例えば「同期の○○さんは介護福祉士の資格手当が付いているからその分あなたより多くなります。」等と就業規則を紐解き説明責任を果たした後で、「しかしあなたも努力して資格をお取りになれば同額になりますので、大いにチャレンジしてみて下さい。また給与の額については、法人の定めた給与規程ならびに法人と交わした雇用契約に従って働いて戴くしかありませんが、毎年、あなたの働きぶりに応じて賞与、昇給で正当に評価させて戴きますから、介護業務に邁進して下さい」等と心情を理解し、ドライブ(動因)を上げてモチベーションを高める働きかけを忘れてはならない。
この時介護のトップリーダーは、人事・給与の就業規則(給与規程・賃金テーブル)の把握、論理的思考、説明責任などのコンセプチュアルスキルが発揮されなければならない。
しかし極一部の介護事業所では、時代の状況や法人トップの一存で介護者間に不可解な給与の差が生じているところがある。このような事業所のトップリーダーは「給与規程に従って」とは説明しずらい為、「これは上司と相談の上、回答させて戴きます」と一旦持ち帰り、上申した後、釈明できる理由があるのなら釈明し、釈明できないのなら釈明できるようにロジックを整え、必ず修正する必要がある事をご承知おき戴きたい。
相対的価値観による不服ではなく、「この給料では一家6人生活が出来ませんので、退職しなければなりません」「子供を大学に行かせたいのであと¥○○、給料を上げて戴けませんでしょうか?」等といった絶対的価値観による不服の対応は更に難しい。
勿論トップリーダーに於いても昇給・昇進のような事案は、職務権限内で処理できるものではないので上司に相談しなければならない事ではあるが、トップリーダーの持ち込み案件は理事・取締役会への直結案件である事が多い為、従業者の雇用を守る為には、訴えてきた当該者から何故給料が不足しているのかを詳しく傾聴し、きちんと分析した上で事案を上申しなければならない。
この時、「当該者はきちんと節約された中で生活しているのか?」とか、「工夫によって生活を回すことができないか」等のプライベートな質問や具体的な指導は、越権と言えるので差し控えなければならないが、トップリーダーに於いては、従業者のある程度の生活水準を維持する為の給与体系案を作成するに当たって、周囲の事業所の給与マーケティング、地域における物価・生活水準などの調査を行い、それらを把握して理事・取締役会に於いてプレゼンテーションできるように、給与相場の把握、雇用層の特定、介護者の賃金テーブルの作成などのコンセプチュアルスキルを持ち合わせておく必要がある。
その上で「○○さんから戴いた事案は、私が世間の給与相場を基にした賃金テーブルの見直しを作成して理事会に図りますので、それまで今暫くお待ち戴けますか?」などと誠意をもって対応することが肝要である。
2)トラブル発生時のヒューマンスキル(人間関係処理能力)発揮例
【指定介護老人保健施設で、A氏(入居者)から"スタッフ(B)の態度が悪いからユニットを変えて欲しい"とクレームが来た】(CS顧客の満足対応)
現場で処理できず、トップリーダーにまで上がってきた入居者のクレームは、入居者(家族)が納得する何らかの答を出さなければならない。
まずはトラブル対応原則に従い、A氏(入居者)、スタッフ(B)のもとに足を運んで、両者あるいは家族や職員、他の入居者から話を伺うと同時に、周囲の状況をよく観察し、問題やトラブルの原因となっているものは何かを探ることが重要である。
介護現場に於いて顧客対応に対するクレームは、その多くが接遇とケア対応に分類することができる。このケースは"態度が悪い"との接遇対応のクレームである。
トップリーダーは、接遇に於ける入居者のクレームの本質を探る際、以下に挙げる様な接遇に対するクレームのロジックならびにコンテンツを持ち合わせておかねばならない。
(1)コミュニケーション問題
① コミュニケーションの取り方(言葉遣い、パラ言語、表情、仕草、感情)
「ため口」「汚い言葉を使う」「へらへらして答える」「いつも怒っているような声」
「顔が暗い」「笑顔がない」「腕組みをして話す」「距離が近い」「怒る」「泣く」等
② 話の仕方
「人の話を聞かない」「話さない」「一方的に話をする」「話が長い」「要領を得ない」
「回りくどい」「余談が多い」等
③ 話の内容
「意見が合わない」「自慢話をする」「悪口を言う」「馬鹿にする」
「嘘をつく」「話が二転三転する」「考え方が浅い」「話題が無い」等
(2)道徳心問題
「時間にルーズ」「自分勝手」「依怙贔屓(えこひいき)」「嫉妬する」
「威張る」「無視したり(心理的)、放っておく(ネグレクト)などの虐待をする」等
(3)容姿に関する問題
「服の着方がだらしない」「ピアスが危険」「服が汗臭い」
「髪がきちんと整髪されていない、不潔」「口が匂う」等
(4)その他(妄想、理不尽な訴え等含む)
「生き方・考え方が合わない」
「お節介」「ずるい」「泥棒する」「○○に似ているから嫌い」「顔が嫌い」等
接遇のクレーム対応の第一歩は、話を聴いた後に、入居者に経過や顛末を説明する事で入居者(家族)を説得することではなく、まずは心情の理解・受容・共感であったり、謝罪であったり、状況によって異なるが、入居者の気持ちを収める事である。何よりも入居者が嫌な思いをしているという現象を収める事、つまり「説得より納得」が重要である。
たとえそのクレームが入居者の理不尽な言い分であろうが、妄想であろうが「説得より納得」の姿勢は変わらない。この入り口で「当方に落ち度はない。入居者のクレームは言いがかりだ」と決めつけてしまっては、サービスの基本である「顧客満足」の姿勢が損なわれてしまう。
このケースの場合だと、まず第一歩は「当介護スタッフBが、いつもA様に対してぞんざいな口の利き方をしているとお感じになっているのですね?そうお感じになってみえるのなら、介護部長としてお詫び申し上げます。申し訳ありませんでした」といった具合に、入居者が嫌な思いをしているという現象を受け止めて収める事である。その上で事実関係を明らかにし、問題の解決に当たらなければならない。
仮に調査の結果、Bのコミュニケーションの取り方に問題があったとしたならば、Bと上長のCを呼び出し、「今回のA様のクレームを調査したところ、BさんのA様への稚拙なコミュニケーションの取り方が、A様に不快な思いをさせたものであると結論付けました。ここに猛省を促し、厳重注意致します。以後このような事の無いように十分留意願います。以上、Bさんへの処分は給与・昇格に影響のない口頭注意の訓告処分と致します。業務命令として、今後、すべてのご入居者様に対して敬称を"様"付けとし、敬語を用い、口角を上げてパラ言語を明るくするよう心掛けて下さい。またこの課題を今年のBさん個人の修正年間目標とし精進願います。ところで私見ですが、今回の一件は、BさんのA様への親しみを込めた砕けた表現方法が、A様にとっては稚拙で不快に感じた事による誤解から生じたものだと思っています。私個人としては、Bさんはご入居者に愛される介護士として活躍される器である事を信じてやみません。これを機にコミュニケーションの奥深さを学び精進していって下さい」といった具合に、問題となる点を上長Cと共に個別面談で注意喚起・教育し、期待を込めた指導を行うようにするとよい。またその後、Bさんが目標通りに行えているのかを定期的にラウンドする事も重要である。
その上でA様に対しては改善計画を明示し、「今後このように改善して参りますので、ご容赦戴けませんでしょうか?」と、CならびにBを連れて共に謝罪し、A様とBの人間関係が継続できるようにファシリテーションする。
この様にトップリーダーは、①場を作り、②思いを聴き取り、③話を整理してかみ合わせ、④話をまとめるといったヒューマンスキルを持ち合わせていなければならない。
3.ミドル・ロアーリーダーの例
1)トラブル発生時のコンセプチュアルスキル(概念化能力)発揮例
【介護の施設※に於いてケアプランが形骸化している】(CS顧客の満足対応)
在宅介護に於いて、介護行為はケアプラン無くしてあり得ない。勿論介護の施設(老人福祉施設・老人保健施設・特定入居者生活介護・グループホームなど※ここで言う介護の施設とは介護保険上で定義されている介護施設とは異なる。)に於いてもケアプランは介護の要である。
しかし一部の介護の施設に於いては、ケアプランが形骸化している施設がある事も否定できない事実である。
なぜなら介護の施設に於いては、施設の介護報酬要件にケアプランの指示をケアに反映させる強制力が無い為、介護支援専門員(以下ケアマネ)の設置やサービス担当者会議、ケアプラン作成を義務付けられてはいるものの、一部の介護の施設に於いては、ケアプランはケア行為のマルメの様に扱われ、ケア行為や医療行為が独り歩きし、ケアプランが形骸化してしまうからである。
つまり本来なら、ケアプランに基づくケアでなければならないところが、ケアプランが形骸化している一部の介護の施設現場に於いては、ケアとケアプランの在り方が、本音(ケア)と建前(ケアプラン)の様になってしまっている。
基本的にケアプランを活かす最大のタスクは、ユニットケアの様な小隊に課せられているので、ケアプランの形骸化を防止する為には、ミドル・ロアーリーダーのコンセプチュアルスキルが発揮されることが一番重要なのである。ここでのコンセプチュアルスキルとは、頭で考えたことを具体的に実行できる一連の介護過程の展開を指す。
介護過程の展開とは、ケアプラン作成の為のサービス担当者会議に進んで参加し、意見具申によりケアプラン作成に積極的に介入した後、自ら介護計画を立案し、ケアプランの実施に於いては入居者の行動の具現化を図り、ケアプランの評価に於いては、目標を設定した期間に応じて評価し、再査定を行う事である。次に介護過程の展開に類似した例を挙げてみる。
2019年体操の跳馬の演技で、空中で縦に2回転しながら横に3回転半するヨネクラという大技が創り出された。この様な技を実現する為には、まず「縦に2回転しながら横に3回転半回る技を作りたい」という選手のニーズのもと、ヘッドコーチを始めチーム全員で「技の完成」という目標を立てて取り組んでゆく。実現に向けての具体的なトレーニングプランを立て、実施者の頭の中にイメージを作り込む。トレーニングの実際は、選手に栄養、筋力、走力、平衡感覚、視空間認識、柔軟性、間接可動域等様々な角度からトレーニング方法を練り、選手に行ってもらい、微調整を繰り返しながら、評価・修正を重ねてより精度の高い技の完成を目指してゆく。この選手の立場に立った技の創作過程の展開こそが、ヘッドコーチのコンセプチュアルスキルである。
ミドル・ロアーリーダーのケアプランに於けるコンセプチュアルスキルもまた同様である。ケアプランの場合、例えば入居者の「歩けるようになりたい」というニーズのもと、サービス担当者会議で「自力歩行」という目標を立て、歩行に向けての具体的なプランを立案して、入居者の頭の中に歩行のイメージを作って戴き、介護現場に於いて入居者に、栄養、筋力、平衡感覚、柔軟性、間接可動域等様々な角度からトレーニングを行ってもらい、微調整を繰り返しながら評価・修正を重ねて入居者の歩行の自立を目指すのである。
このコンセプチュアルスキルがミドル・ロアーリーダーに無いと、リーダー自身が入居者の自立歩行のイメージが湧かないので、チーム支援も適切なケアにつながらず、入居者に「歩けるようになりたい」というニーズはあっても、ケアプランで作成された歩行のイメージが入居者に伝わらない。トレーニングの意図が入居者に伝わらないので歩く事が出来ない。その結果、ケアプランにおいての目標は「自力歩行」であっても、ケアの実際は「○○様は歩けない」と間違った評価をし、車椅子での移動を支援するという事になりかねない。これがケアプランという建前とケアの本音につながるのである。
ケアプランを形骸化しない為にはこの本音と建て前を一つにまとめ上げる、ミドル・ロアーリーダーとしてのコンセプチュアルスキルが頗る重要なのである。
3)トラブル発生時のテクニカルスキル(業務遂行能力)発揮例
【記録が書けない】(OS組織の満足対応)
介護記録は、入居者への介護の内容ならびに心身の状態や生活状況などが書かれており、それらの内容は介護の重要な基礎資料や研究資料となり、利用者本人・ご家族の閲覧、介護実践の証、職員間での情報共有、ケアプランの査定資料、多職種・他事業所との連携、学術的研究等に使われ、介護保険制度上でのサービス提供の義務とされている。
また適切な介護記録は、身体拘束、苦情、介護事故などの記録を義務付けられており、嫌疑や訴訟が起きたときの法的証拠書類として、法人や施設・事業所、介護職員を守ることにつながる為、その適切な記載は頗る大切である。
従って適切な記録の記載と管理は、介護事業を行う組織には必要不可欠なものである為、「記録が書けない」という問題を抱える組織にとっては最重要解決事案と云える。
そのタスクの要となるのがミドル・ロアーリーダーのテクニカルスキルである。
ここで云うミドル・ロアーリーダーのテクニカルスキルとは、決してリーダー自身の記録がうまく書けるという事ではなく、チームとして適切な記録を書けるようにするスキルの事である。
といっても、記録は一朝一夕に書けるように成るというものではない。またOFF-JT(Off the Job Training…現場から離れ、座学などで仕事について学ぶ)ではなかなか書けるようには成らない。
適切な記録が書けるようになる教育の一番の近道は、定型文を作成し模写させるOJT(On the Job Training…仕事をしながら学ぶ)である。「まず書いてみせ、説いて聞かせて、模写させて、褒めてやる」これが一番早く上達する。
しかしこれからは、記録を手書きで覚えるより、5Gの到来によりモバイルを使ってノートパソコンやスマートフォン・タブレットを利用し、定型化された介護記録ソフトの使用方法を覚える事になるだろう。おそらく今後5年以内に、介護記録の殆どは記録ソフトによる電子化に移行してゆくものと思われる。
またそれらの記録は、外国人介護就労者の増加によって、言語音声を介護記録に変換できる機能を備えたものに進化してゆくに違いない。
しかしだからと云って、ミドル・ロアーリーダーの適切な記録作成に於けるテクニカルスキルは、スマートフォンやタブレットを使った介護記録のソフトの使用方法という訳ではない。ミドル・ロアーリーダーの適切な記録作成に於けるテクニカルスキルとは、記録の有無・記録に書かれる内容のラウンド(精査)、記録の管理である。
記録が書けないチームの特徴は、必要な事項の記録漏れ、不適切な記録内容、杜撰な記録管理の3拍子である。ミドル・ロアーリーダーはこのタスクを上げなければならない。
記録漏れや不適切な記録内容に関してはOJTに於いて、(1)なぜ記載しなかったのか、(2)何の為に必要なのか、(3)何が必要なのかを説いて聞かせて模写させるのである。
(1)なぜ記載しなかったのか
「うっかり」なら習慣付けるよう繰り返しのチェックを行う。記載する必要性を感じていなかったら(2)、(3)へ移行する。
(2)何の為に必要なのか
記録の概念を教える。①利用者本人・ご家族の閲覧、②介護実践の証、③職員間での情報共有、④ケアプラン査定資料、⑤多職種・他事業所との連携、⑥学術的研究の資料、⑦介護保険制度上でのサービス提供の義務、⑧介護事故や訴訟が起きたときの法的証拠書類
(3)何が必要なのか
①語彙の習得
介護記録の必要性を説き模写させる際、あいうえお順に語彙表(良く使う語彙で、読み方と意味が書かれているもの)を作成して於いて、語彙を知らない場合は、語彙表を紐解いて学習させるようにすると効果が上がる。
②分かりやすく書く
5W1H【いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、なぜ(Why)どうしたか(How)】で記載する。
③当該法人のルール遵守
例)9:00~18:00黒ボールペンで記載、18:00~翌9:00赤ボールペンで記載など
④記録書き方例…フォーカスチャーティング

そして最後が杜撰な介護記録の管理の防止である。
個人情報保護法が改正され、個人情報の取り扱いは前にもまして一層厳しくなっている事や、介護保険法の定めに従い、介護記録の管理には最新の注意が必要である。
介護老人福祉施設では、介護保険法に基づく厚生省令第39号「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準」第三十七条、厚生省令第46号「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」第九条に、記録に関して以下のように記されている。
(記録の整備)
第三十七条
指定介護老人福祉施設は、従業者、設備及び会計に関する諸記録を整備しておかなければならない。
2 指定介護老人福祉施設は、入所者に対する指定介護福祉施設サービスの提供に関する諸記録を整備し、その完結の日から二年間保存しなければならない。
(記録の整備)
第九条
特別養護老人ホームは、設備、職員及び会計に関する諸記録を整備しておかなければならない。
2 特別養護老人ホームは、入所者の処遇の状況に関する次の各号に掲げる記録を整備し、その完結の日から2年間保存しなければならない。
一、入所者の処遇に関する計画
二 行った具体的な処遇の内容等の記録
三 第十五条第五項に規定する身体的拘束等の態様及び時間、その際の入所者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由の記録
四 第二十九条第二項に規定する苦情の内容等の記録
五 第三十一条第三項に規定する事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録 |
記録物の保管を電子ベースだけに頼ると、天変地異などによって電気系統の異常が生じ、万が一データーが消失した場合、取り返しがつかなくなる可能性があるので、記録の管理は、必要最小限の紙と電子ベースでの2種類併用が望ましいとされている。
記録物ならびに利用者の情報の事業所外への持ち出しは厳禁。また、無くさないようきちんとファイリングして、サービス終了(退去)時から2年間保存し、処分する際はシュレッダー等で、情報の流出が無いようにしなければならない。
しかし気持ちの上で一番大切な事は、記録の管理ではなく、記録を処分した後でも利用者の心に残る温かい介護の記憶であることを忘れてはならない。
4.おわりに
介護リーダーの仕事は多岐に渡ります。ですから6回と決められた企画の中では書ききれるものではありません。
日総研様よりお話を戴いた当初は、現場での実践の中から書いてゆこうと考えていましたが、「あれも書きたい、これも書きたい」と次々とアイディアが湧いてきて、コンテンツだけで構想が膨大になってしまったので、仕方なくマクロ(総論)的な視点を中心に書き進め、最後にかろうじて極々最小単位の各論項目を書く事ができました。
現在コロナが未曾有のパンデミックを引き起こし、ソーシャルディスタンス・マスク・ステイホーム・リモートワーク・テレワークと…次々と新たな生活様式を産み出し、世界は新たな価値を創造してゆきます。
しかし介護の本質である「あそび(愛情・尊敬・美徳)心」は、人類が生き続ける限り変わることがありません。
これから迎えると云われるシンギュラリティーの時代に於いても、介護という仕事が無くなることはありません。その時代に介護の種を落としてゆけるよう、介護リーダーの皆様があそび心のたわわな実を付けることを願って、私の頭の中の筆を置きます。
ご愛読戴き誠にありがとうございました。
引用文献:介護保険法に基づく厚生省令第39号第三十八条、厚生省令第46号第九条
参考文献:介護リーダー役割発揮のための基礎50 中央法規出版石郡英一
ISHIKORI METTOD(カンボジア日本技術大学介護教科書) |