施設マネジメント


【第4回】 「従業員教育の重要性」

バイトテロと使用者責任

 飲食店の厨房などで、食べ物を粗末に扱いふざけて遊んでいる動画をSNSサイトに投稿してそれが拡散。その行為が世間からバッシングを受けて、お店の営業に大きな打撃となったことが話題になりました。動画を投稿したのがアルバイトであったため、バイトテロと呼ばれました。

 お店の評判と信用が落ちたことから、いくつかの事例では結果的に閉鎖せざるを得ないという大きな打撃を招いてしまいました。

 そもそもそのような動画を投稿した従業員やバイトにその損害を償うだけの資力はありません。ほんの出来心からの安易な行為が、大きな損失と他の従業員の働く場所を奪うという事件となってしまいました。

 もしこのようなバイトテロと呼ばれるような事件が、個人情報の取扱いであったならどうなるでしょうか。事業所の顧客の個人情報がSNSに投稿され、その顧客の人権にかかわるような事件となったとしたら、事業所が閉鎖になるだけでは済まされない更に恐ろしい事件となるでしょう。

 従業員が、ふざけてなのか、悪意なのか、不正利用なのか、いずれにしても個人情報漏えいとなる事件をネット上で起こしたら、間違いなくその使用者である事業者の責任が問われ、刑事・民事で責任を負わされ、営業上あるいは取引上の継続そのものが瞬時に困難になるはずです。

現実を正しく認識させる

 そもそもどうして個人情報は大切にしなければならないのでしょうか?

 個人情報を漏えいすれば顧客から文句を言われて賠償しなければならないから?社会的信用の問題になるから?まずはこの点を正しく理解してもらわなければ、ただうるさい注意や規則としてしか聞いておらず、何を?なぜ?大切にするのか本当の理解に至らないのです。

 個人情報保護法では、第一条(目的)に個人の権利利益を保護すること。第三条(基本理念)に個人の人格尊重の理念の下に慎重に取り扱われるべきと規定されています。すなわちこれは人権保護をめざす規定なのです。そもそも誰でも自分の個人情報は大切に取り扱って欲しいと要求するものです。それであれば、他人の個人情報も同じように大切に取り扱う意識が求められるはずです。いわば他人を傷つけてはいけない理由と同じです。

 個人情報が手に入れば様々なカタチで利用する輩が出てきます。単にチラシが送られてくるだけであればまだマシで、詐欺行為を仕掛けられることも珍しくありません。怪しい商売や犯罪行為が仕掛けられるのは、そんなかたちで集められた個人情報を使って行われるのです。その犯罪行為がどこから漏れた個人情報かということが推察あるいは特定されると、漏えいした事業所も原因を作った立場として責任が問われます。

 自らの事業のために他人の個人情報を預かっているのですから、その安全管理を行うことは当然の義務として求められます。社会が成熟してくると訴訟社会になるのでしょう。この迷惑や被害は誰の責任なのか、常にその原因が問われ損害賠償が求められる風潮は否めません。

 従業員には他人の個人情報を守る意味と今の現実を正しく認識させる必要があります。



スマホ/SNSに注意

 一番危険なものの一つは、誰もがいつも持っているスマホです。職場内の動画撮影、書類などの写真撮影、これらを禁止していますか?インスタグラム、ツイッター、Facebook、LINEなどに書かれている様々な情報を集めて特定の人物の全体像を明らかにすることが出来ます。名前や住所などの個人情報は誰でも気を付けているつもりです。しかし、名前を伏せていても顧客の写真や行動や性質まで、もしそれらの情報が組み合わされた場合にはその人の高度は情報となって悪用されることがあります。社内の人間の悪口だって個人情報です。一度拡散した情報を消すことは、ほとんど不可能です。

 個人情報以外に特許に関わる技術・事業の存続に関わるノウハウや機密などを保持する事業所では、業務中は個人の所持するスマホの置き場所が定められ、スマホを触ること自体が出来ないという職場もあります。スマホのカメラ部分にシールを貼って目隠しをして、ロッカーに保管した上でなければ作業場や仕事場に入れないようにしている企業もあります。

 しかし、そのような特段の取り決めのない職場では、個人情報のすぐ近くに私物のスマホがいつでも撮影できる発信できる状態で置かれているということなのです。

 便利であるが故に、メモ書きをするより簡単に記録出来るという理由で書類などを写メに撮ったりすることはありませんか?忘れないように撮影したものを写真データとしてそのまま持ち続けるなどということがありませんか?様々な場面でだれでも直ぐに写メを撮ろうとしていませんか?その安易さが漏えい事故の可能性を高めるのです。

 自分だけが所持するつもりの写真やデータが本人以外も見ることの出来るようなカタチでSNSに掲載される事故や、それらが外部に誤って送信される事故も起きています。また自分では相手が限られていると思っても、その先の相手がどう扱うかは分かりません。内緒の話が本当に内緒になった試しはありません。SNSで秘密が守られることは無いのです。一人の軽い行為が簡単に企業を吹っ飛ばすくらいの取り返しのつかない漏えい事故となるのです。


事故の確率を減少させる取り組みを

 社内規定は必要ですがそれで安心は出来ません。そもそも完璧な対策は無いと知るべきなのかもしれません。だからこそ、常々、何度も業務上の情報の取扱いをプライベートと切り分けて行動出来るよう、従業員一人一人の頭の中で考える習慣を促す注意喚起と教育が必要なのです。

 今は在宅勤務・テレワークなどで情報を事業所外へ持ち出し、危険が高まっている状態です。大きな病院でも、仕事帰りに立ち寄った飲食店の駐車場で車上荒らしにあって、カルテが入ったカバンを持ち去られたという事件もありました。そもそも事業所外に許可なく個人情報を持ち出すことは禁止されているのですが、たとえ許可があっても通期途上で肌身離さず書類を持ち続けなかったことがダメなのです。そんな意識の醸成が事業所のなかで出来ていなかったことが問題です。

 自動車運転免許取得の学科テストで100点を取れたから、それからずっと車の安全運転が出来て事故を起こさないわけではありません。法律や規則など「知識の学び」も必要ですが、安全教育による「事故の確率を減少させる」取り組みが必要なのです。今日も車を運転するあるいは個人情報を取り扱うのであれば、常に指差し確認するくらいで安全を意識しましょう。

 人の行動のほとんどは無意識から起こっています。繰り返し教育することによって個人情報に対する心構えと習慣に変えなければなりません。

 ただうるさく注意しても、決まりを押し付けても効果的ではありません。守るべきものは何か、なぜ守るのかを教育し、具体的にどのように守るかを現場で考えてもらうことです。

 誤解を恐れずに言えば個人情報保護法の内容を知らずとも、全従業員が個人情報漏えい事故に対してお互いに注意し合える職場環境となり、みんなで無事故を目指す空気に変えましょう。

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