施設マネジメント


【第2回】 「外国人スタッフに対する日本語学習支援のポイント」

 前回の総論では、当法人の現場責任者が感じた「日本語初級者を受け入れる際に求められる配慮」として、次の3点をご紹介しました。

 1.利用者に話す時と同じように話すこと
 2.正しい日本語で話すこと
 3.「大丈夫です」は大丈夫ではないと心得ること

 今回はその内容をふまえ、当法人が設立した「すみだ日本語教育支援の会」の日本語講師であり、長年介護現場で働く外国人スタッフの日本語教育に携わってきた先生から得た情報をもとに、「外国人スタッフに対する日本語学習支援のポイント」についてお話していきたいと思います。
※すみだ日本語教育支援の会:「聞く・話す」ことには問題がない在日外国人介護員向けに開かれた、
 「読む・書く」ことに特化した日本語教室

●夏休みの補講とアルバイト就労
 前回紹介したように、N4レベルで来日した留学生は日本語学校に通いながら、週末のみグループホームでアルバイトを始めました。しかし、N4レベルでは理解できない指示が多くあり、苦労も多かったようです。この言葉の問題は、アルバイトを受け入れたグループホームの日本人介護スタッフの負担にもなっていました。
 また、1年後に介護福祉士養成校へ入学することを目指し勉強していましたが、合格後に養成校の授業についていくためには、「読む・書く」だけが問われる日本語能力試験の対策だけでなく「聞く・話す」能力を伸ばすことが喫緊の課題となりました。
 この課題に対して、すみだ日本語教育支援の会では、留学生が夏休みの間に「聞く・話す」能力を伸ばすための特別補講を行いました。補講は日本語講師の講義と演習、講師や日本人ボランティアとの会話練習を組み合わせ、週2回の講義を4週間行いました。
 また、長期休暇中の留学生は、1日8時間週40時間までアルバイトすることが可能でしたので、少しでも日本語を使う機会を増やすことと、介護の仕事の理解を深めることを目的として、当法人のデイサービスと従来型特養でもアルバイトしてもらいました。

●日本語学習支援のアドバイス
 N4レベルの留学生は、「動作を表す言葉」は概ね頭に入っていますが、介護現場では往々にして"改まった表現"をしがちなため、指示が理解できないことが多いようです。
 例えば、「~をする」と言われれば理解できるのに、「~を行う」と言われると理解できません。また、気を遣って「行う」を文字で示されると、どこに「行く」のだろうか?と考え、益々混乱してしまいます。ほかにも、「おしゃべりはダメです」と言われればわかるのに、「私語禁止」ではわからないのです。
 特に日本語初級者は、勉強したことがない言い回しに出会うとパニックになりやすいと感じています。前回お伝えしたように、ゆっくりと大きな声で伝えるのはもちろんですが、こちらが指示したことが通じない時は、他の単語で言い換えてみるとよいでしょう。それでも通じない時は、やって見せれば動きでわかる時もありますし、書いて見せればそれをメモして後で調べることもできます。
 ここで、日本語初級者を困らせてしまう"日本人がやってしまいがちなこと"をお伝えしておきます。

〈こんなことしていませんか?〉
①1対1で話すときはゆっくり話すことを心がけていても、そこに日本人スタッフが入ってくると、
 会話スピードが速くなってしまう
 →ゆっくりと大きな声で話すことが日本語初級者との会話の基本です。
②相手の言いたいことをわかろうとするあまり、話している最中に先回りして話をさえぎってしまう
 →話すことも日本語を学ぶ上で重要です。文章の最後の句点がくるまで待つと、
  日本語の上達につながります。

 また、日本語の発音が悪く伝わりづらいときは、何度もそのフレーズを言い直してもらい、うまくいったときには「それ!」と伝えましょう。その時の感覚で、発音を体得することができます。発音する際の唇の開き方や息の強さ、舌の位置は感覚的なものなので、言葉で説明するよりも自分の感覚で覚えてもらった方が良いのです。

●日本語学校で学べない内容は現場でフォロー
 日本語初級者は語彙が少ないため、利用者との会話が抽象的になってしまいます。しかし、どんなに日本語を習っても、そのテキストは現代に合わせた単語しか載っていません。つまり、介護を必要とする高齢者が生きてきた時代の単語を知る機会がないのです。
 例えば、日本語のテキストに"エアコン"は載っていても、"湯たんぽ"は載っていないという具合です。「汽車に乗って女学校に通っていたよ」、「この辺は空襲で全部焼けてしまったよ」、「嫁に来たときは角隠しをつけていたよ」といった昔の思い出話を利用者がしてくださっても、学校で習わない単語ばかりなので内容を理解できないのです。
 これらの単語は、ひょっとしたら日本人の若い職員も知らないのではないでしょうか。施設がある地域や利用者が住んでいた地域は昔何という地名だったとか、昔は何があったといったローカルな歴史も、日本語学校では教わることができません。
 そんな時は、日本語の勉強が足りないと思うのではなく、近くにいる日本人スタッフがやさしく教えてあげて欲しいと思います。

●話題の選択も文化によって異なる
 日本語初級者は、間違った日本語を使ってしまうのではないかと、なかなか自分から仕事以外で周囲に話かけることができません。そこで、日本語学校の課題として"自分が一番聞きたいことを聞いてみる"ように促したところ、いきなり"お給料をいくらもらっているのか"と質問していました。
 日本語学校では、誰かに話しかける際「ちょっといいですか?」とか「今お時間ありますか?」と声掛けすることは教わります。しかし、日本ではいきなり他人にお金の話をするのは不躾であるといった話題選択の文化や、"学校の課題だから"という説明をしてから少し立ち入ったお金の話を聞くという話題展開の仕方は教えてくれません。これらは、実は日本人だから自然と身についていることなのです。そういった"行間の部分"も丁寧に伝えていくと、より職員とのコミュニケーションも円滑になると思います。

●日本語講師からのアドバイスをうけて
 近年東南アジア諸国の経済成長は著しく、先生方が日本語を教えている留学生や技能実習生たちの来日目的も、日本でお金を稼ぐことから将来に向けてのスキルアップへと変化してきているといいます。
 また、私たちがわざわざ言わなくても当たり前にわかっているだろうという事は、日本人の若い世代にとっても、今や改めて伝えなければわからないことになってきています。新しい仲間が早く一人前になれば自分たちが楽になり、利用者にもより良いサービスが提供されます。受け入れる私たちも、チームの一員に加わった仲間を育てるという意識をより強く持ち、一緒により良い職場を作り上げていきたいと改めて思いました。

笑顔で利用者と接する外国人スタッフ