施設マネジメント


【第4回】 外国人スタッフの本音①

 各論第四回目と第五回目は、実際に当法人が支援している日本語初級者の留学生に話を聞き、それをもとにお話していきたいと思います。

 第一回目総論でご紹介したカンボジア人留学生Aさんと、ベトナム人留学生Bさんは、現在来日3年目になり、介護福祉士養成校2年に在学しています。今年の12月には日本語能力試験N2、来年1月には介護福祉士国家試験を控え、勉強と従来型特養でのアルバイトを両立させています。

 実習も終えて専門学校卒業に向けて頑張っているお2人が、実際に現場で役立った支援や、こんな支援があれば良かったと感じていることについて、今までお伝えしてきた配慮を検証しながらお話したいと思います。

総論の検証

「大丈夫です」はやはり大丈夫ではなかった

 N4で来日して約1年間は毎月留学生との定例ミーティングを持ち、生活上の困りごとから日本語学校での学習、アルバイトの様子などを聞き取っていましたが、彼女たちからの発言はあまりありませんでした。

 久しぶりに会った彼女たちは私の質問を理解し、表現に不十分なところはありますが、的確に回答できるようになっていました。驚く私に彼女たちは、「もともとよくおしゃべりする方だったが、間違った日本語を使ってしまうのではないかと怖くて話をしなかった」と告白しました。

 また、「日本語学校に通いながらアルバイトをしていた1年目は、正直なところ日本語の指示や利用者の話はほとんどわからなかったが、専門学校の授業やアルバイトを通して今では言っていることはだいたいわかる」と言います。

正しい日本語で話すことに加え、学校で習う「標準語」に置き換えが必要

 彼女たちが通う介護福祉士養成校は、日本人学生より留学生が多く、特にベトナムからの留学生が多いといいます。学校では日本語を使うよう厳しく指導されるようですが、どうしても学生同士はベトナム語で話してしまうそうです。

 また、カンボジア人のAさんもベトナム語が堪能なため、日常生活でもお互いベトナム語を使っており、日本語を使用するのは施設でのアルバイトが中心になります。本人たちもせっかく勉強した単語を使わないと忘れてしまうので、なるべくアルバイトで使うよう心掛けているそうです。

 しかし、特に利用者は標準語で話してくださる方だけでなく、方言が強い方も少なからずいらっしゃいます。留学生は聞き取れても意味がわからないので、「職員に標準語に訳してもらって助かった」と言います。

利用者に話す時と同じように話すことはやはり有効

 実習に出てみて、当法人の施設は外国人介護員の受け入れに慣れていると感じたそうです。「ゆっくりはっきりと話してくれるので聞き取りやすい」と言います。

 それだけでなく、「日本語でも文化でも何でも分からない時は聞いてね」と直接言ってくれる職員がいると、わかるまで何度も質問できるので安心するようです。もちろん直接は言ってくれない職員も、留学生が質問すれば快く教えてくれると思いますが、特に留学生には「一度言った」だけではわからないことも多く、何度も根気強く質問に答えてあげるだけでなく、「気兼ねなく質問できる」ことを直接伝えてあげて欲しいと思います。

各論第二回の検証

言葉で説明してわからないときは見せることが有効

 わからない単語が出てきた時、留学生はまず職員に質問します。「言葉で聞いてわからない時はやってみせてくれると理解できた」と言います。それでもわからない時や、近くに職員がいない時はメモしておき後で調べているようです。

 その他には、カタカナ表記は苦手な様子で、利用者が使用する様々な軟膏や職員が使用する洗剤などの名称をアルファベット表記で覚えています。また配薬を間違わないよう利用者の顔写真を貼っているのを見て、「配膳する際などにも写真があると良い」と言います。

 耳からの情報だけでなく、視覚でも伝えることは事故のリスクを避けるためにも重要だと改めて感じました。

語彙力には日本固有の文化や気候も含まれる

 語彙力がないことと、日本の文化をまだ良く知らないことによって利用者との会話や対応に困ることがやはりあるようです。

 例えば、季節特有の挨拶や行事の話題になるとどう答えてよいかわからず、それらについて自ら話題をふることはもっと難しいようです。専門学校の授業や留学生が多い状態での会話シミュレーションでは練習できないので、「利用者への職員の対応や日本人同士の会話ややりとりを聞いて、その通り話すように心がけている」と言います。

 私たちも利用者との会話のきっかけを作ったり、会話をスムーズにしたりするために、気候を話題にすることが良くあります。冬至のかぼちゃやゆず湯といった季節特有の行事、旬の食材を使った献立なども、話題にあげる際に一つ一つ伝えていってあげて欲しいと思います。

言葉の使い分けも行間に含まれている

 私たちは書き言葉と話し言葉を無意識に使い分けています。それと同じように、現場では専門用語は記録を書く時や職員同士で使い、利用者とは一般的な話しことばを使います。しかし留学生は、専門用語と話ことばを相手やシチュエーションによって使い分けると知らないので、困惑していることがあるようです。

 例えば、「義歯をはずして下さい」と利用者に言っても通じず、後で「入れ歯をはずして下さい」と言えば通じるとわかったと言います。

 今回留学生にインタビューした際に、これまでの配慮について一つ一つ質問はしませんでしたが、彼女たちから出てきた話やエピソードは、自然とこれまでの話を裏付けするものでした。

 次回は、第三回の検証と、見えてきた今後の課題についてお話したいと思います。