連載最後となる今回は、外国人介護員の受け入れが職場に与えた影響や、これから増えていくであろう外国人介護員の育成について、課題も含めてまとめていきたいと思います。
※本稿に登場するAさん、Bさん、Cさん、Dさんの背景については、本連載第1回をご参照ください。
外国人介護員が職場に与えた影響
〈N1レベル〉
N1レベルの日本語能力を持ち、介護福祉士養成校卒業後、国家試験に一発合格した元留学生Cさんは、現在正職員として勤務して約1年が経とうとしています。当法人では、外国人介護員だけでなく日本人介護員の育成においても、基本的に最初は従来型特養に配属し、その後ユニット型特養に異動となるようにしていますが、Cさんもやはり従来型特養のアルバイトからスタートし、正職員になるタイミングでユニット型特養に配属されました。
ユニット型特養では、利用者1人に対する介護員が手厚く配置されています。一方、新人職員が何か良い対応や働きをしても、その様子をリアルタイムで見て、褒めてくれる職員がいません。そのため、特に初期は従来型特養でしっかりと周りの先輩職員が新人職員を見ること、そして、出来ているところは褒め、改善が必要なところは注意するように指導しています。
逆に従来型特養では、オムツ交換や食事の配膳・介助など、自分が介助する前はどの職員がその利用者に関わっていたのかすぐにはわかりませんが、ユニット型特養では明確に誰が関わったのか、その仕事の出来栄えはどうかがすぐわかります。
今回、前述のCさんが配属されたユニットで職員アンケートを実施したところ、次のような記載がありました。
Cさんの後にシフトに入ったところ、仕事の出来栄えが丁寧なうえ、不穏な状態になっていた利用者が何事もなかったかのようにいつも通りの時間に入眠されていたことに驚き、自分の仕事の仕方を見つめなおす良い刺激になりました。
Cさんは、障がいのある児童の面倒をみたことをきっかけに介護という仕事に興味を持ったそうです。そして、介護福祉士養成校に入学後、"介護の現場で学びたい"という強い意志を持って当法人の特養でアルバイトを始めました。漢字圏出身というアドバンテージはありましたが、"日本人よりたくさん勉強しなければ合格できない"と考え、国家試験の1年前から毎日2時間試験勉強をしていたといいます。
「介護の仕事が好き」という気持ち、熱心に努力する姿、そしてそれらが仕事の出来栄えに表れていることが、日本人職員にとって刺激となり、チームワークも良くなったと感じています。

〈N2レベル〉
N2レベルの日本語能力を持ち、介護福祉士養成校卒業後は残念ながら国家試験に合格できなかったミャンマー出身の元留学生Dさんは、気持ちを切り替え正職員として働きながら、今年2回目の挑戦で国家試験に合格しました。Dさんも介護福祉士養成校に入学するための日本語学校に通うなど、介護の仕事につくことへの熱意が感じられていました。
Dさんは現在も従来型特養に配属されていますが、日本語初級者からスタートしたベトナムとカンボジアからの留学生の先輩として、自分の経験を活かした気づきで2人をフォローしてくれています。

なお、最初から日本語でのコミュニケーションにほとんど問題がなかったCさんとDさんは、次の2つを"働きやすさを感じた点"として挙げています。
・アルバイトから続けて同じ職場で勤務していることで、業務がスムーズに覚えられた
・仕事だけでなく、母国への一時帰国に伴う長期休暇の希望といった生活上の困りごとを、
上司や同僚と相談しやすい雰囲気がある
このような意見を受け、たとえその場で問題が解決できなくても、他課も含めて相談の輪を広げ、迅速に解決策を見出すことが、外国人介護員の職場への信頼につながっているのだと感じました。
来日前とのイメージのギャップ
すでにN2レベル以上の日本語能力を持つ留学生は、アルバイトとして採用する前の面接時から、この仕事に対する意欲や考え方を把握することに問題はありませんでした。しかし、N4レベルからスタートした留学生は、正直面接ではこれらを読み取ることが難しく感じていました。
今回、日本語能力も介護員としても成長した彼女たちにインタビューをして、初めて彼女たちがどのような理解で日本に来たのかを知ることができましたので紹介します。
〈N4レベル〉
カンボジア人留学生のAさんは、カンボジアにある介護に特化した日本語学校で日本語を学び来日しました。"介護の仕事について最初はよくわからなかったが、だんだん好きになった"と教えてくれました。
また、ベトナム人留学生のBさんは、ベトナムで看護学校を卒業後、日本語学校で半年間勉強して来日しました。特養で働き始めてから、介護と看護は異なる仕事であると気づき正直がっかりしたそうです。
しかし、ベトナムの看護師は治療の際に必要な事しか患者さんと話をしないのに比べ、日本の介護職は傾聴する時間が多く、利用者がどんな人なのか、どのような生活を送りどんな趣味を持っているのかを知ることができる仕事だと分かり、その魅力に気づいたと言います。看護学校で学んだ知識についても、高齢者に多い高血圧や糖尿病など、なぜその病気になったのか、どんなことに気を付けなければならないかなど、少なからず役に立っているとのことでした。
東南アジアでは、家庭で高齢な家族の面倒をみることが主流なため、介護職に向いているとされていますが、専門職としての介護職のイメージが不足しているようです。そのため、来日時に介護の仕事内容を理解し、イメージできているかどうかは、日本語能力の限界もあり確認することが難しいと改めて感じました。
日本語能力の向上とともに、介護という仕事の魅力をしっかりと伝えていくことが、長く日本で介護職として働いてもらうためには不可欠だと思います。
今後の夢とキャリアアップ
当法人で働く外国人介護員たちは、将来は母国に戻って介護の指導者・経営者になること、日本へ配偶者を呼び寄せ中長期で働き続けることなど、それぞれの形で介護を通して母国と日本の架け橋になりたいという夢をもっています。そのために、まずは介護技術の向上を直近の目標とし、いずれは特養以外の部署を経験することを希望しています。
日本語に関しては、初級者はまず日本語でのコミュニケーションが問題なく取れるようになること、記録ができるようになることなどを目標にあげていますが、いずれ在宅サービスなどに異動を希望するのであれば、利用者本人だけでなくその家族とのやりとりなど、より高度な日本語の会話が求められます。「間違いは多少あるけれど(自分には)意味が伝わっている」というレベルで良しとせず、気づいたことがあれば必ず教えてあげて欲しいと思います。
なお、当法人で働くN1レベルの外国人介護員は、介護に関する通訳や翻訳にも意欲をみせており、私たちの当初の期待より幅広い活躍の可能性が出てきています。
まとめ ~今後の課題と期待~
日本語能力の問題から、来日前に「介護」に対する理解を確認することは難しいと改めて感じました。しかし、他課も含めて、仕事面だけでなく生活面も含めてサポートする環境が信頼関係を築き、外国人介護員をチームの一員として育成する近道になると思います。それに加えて、介護のやりがいを感じる機会をいかに作れるか、職員がやりがいをもって働く姿をいかに見せられるかが、日本語能力を超えた人材育成の鍵になると考えています。
また、外国人介護員が5年後、10年後の目標に向けて今何をするべきか、本人と相談しながらキャリアアップの計画をたてることが当法人では直近の課題となっています。ある程度の期間日本で働くと、母国との職業文化の違いに悩むこともあると思いますし、これから迎える人生の節目や家族の問題といった新たな課題が生じることも予想されます。日常業務に慣れ、日本人職員の中に溶け込んでいるように見えても、定期的に話を聞く機会を持っていきたいと思っています。
そして、将来的には日本人職員だけでなく、外国人介護員自身がよき先輩として、日本語や文化の違いによるとまどいなど、日本人職員には相談しづらいことも含めて、後輩留学生たちの相談役として活躍してくれることを願っています。そうなった時、本当に外国人介護員が定着したといえるのではないでしょうか。
|