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これまで述べてきたように、医療福祉の制度設計は「アウトカム評価」「効率化」「省力化」「労働力代替」に向かっています。そして、これらを促進させる車の両輪となっているのが、介護データベースに代表されるデジタル化(データヘルス改革)と、ロボット、IoT、AI、センサー等の活用です。

〈データヘルス改革で導入された改革の目玉「LIFE」〉
介護データベースとして試験導入、運用されてきた「CHAS」と「VISIT」が2021年4月に統合され、「LIFE」と名付けられました。
データヘルス改革の目玉は、「LIFE」によるデータ提出です。本連載の第4回でも取り上げましたが、2021年度介護報酬改定はデータ収集の土台作りの開始に過ぎません。つまり今は、ICT化に立ち遅れている介護業界にデジタル化を推進して、CSV様式でデータが提出されるシステムの浸透を促進するのが主眼です。
そのため、「LIFE」そのものも初期の仮仕様で、ICT化が間に合わない介護事業所がある場合も想定しています。過渡期ですから、紙の様式で提出されたものを受理し、データを後追いで入力する事態も考えて、厚生労働省より提示された帳票の様式に一致した形式で作られています。2024年度までの3年間でICTの導入と整備を進め、各事業所からCSV様式で9割以上提出される状況となるまでのお試しバージョンといったところでしょうか。
実際に「LIFE」に入力された方も徐々に増えていると思います。入力作業を行いながら気が付いた方もいらっしゃると思いますが、今後の発展のため余地として空白の利用していないデータ部分があります。例えば、「フィードバック帳票」というような項目がありますが、実際には今回の入力はありません。つまり、さらに大きく変えることが前提となって作られているということです。
〈「LIFE」への対応力がICT化で利用する機器選定の材料になる〉
「LIFE」でのデータ提出には、もうすでに介護請求ソフトが対応を始めていますが、今回の対応スピードで各ソフト会社の開発能力差が明らかとなってきています。今後数年から10年間は毎回のような大改定でしょう。今回の改定にともなう仕様の変更程度で、直ちにユーザー視点で使い勝手が良いような作り込みができない会社は、システム入れ替えの時期が近いという判断材料となると思います。
"使い勝手が良い作り込み"とは、例えば"エラー表示内容の詳細や未記入項目一覧等について、問題の箇所の画面がカーソルを置いただけで表示される"といった機能が実装されているかどうかということです。請求提出のための"「LIFE」対応済み"と謳っているものの、"CSVファイル化して電送することに対応しています"というだけのソフト会社には、最低限のことしか開発する能力がないため、「次期改定では能力不足となる可能性が高い」と考えてください。
その理由は、次期改定では複数の事業所の所有する他社ソフトとのスムーズな連携が必須となるため、数段難しい仕様変更が求められる事態となることが予想されるからです。自社システムの改変程度でユーザー目線が貫けないようでは、請求業務で他事業所とやり取りを始めた途端にトラブル頻発となりかねません。オンラインでつながる予定である他の事業所に迷惑をかける恐れがあるのです。
〈デジタル庁開庁で急加速するデジタル化の波〉
コロナ禍の影響は行政のデジタル化にも及び、何もかもがスピードアップしています。
菅政権が推し進めているデジタル庁は、準備開始から1年足らずの2021年9月1日に開庁となります。わたしたちの感覚では「こんなものか」と思ってしまいますが、省庁の新設には準備に数年かけるのが普通なので、これは通常の6倍のスピードだそうです。
このようなスピードで実現が可能だったのも、2018年頃から下準備を進めていたためです。それを前倒ししたのですが、それでも異例中の異例でしょう。
コロナ対応で、"小回りが利かない""スピード感のある動きが取れない"という縦割り行政の弊害が白日の下にさらされ、自治体、省庁でも過剰な負担のかかる部署とそうでない部署の差が大きくなりました。これに対し、機械化以外に解消方法がないことが明らかとなったことも、「デジタル化導入を10年は早めただろう」と言われています。
新型コロナのワクチン接種は加速を続け、ついに一日あたりの接種者数は140万人の大台を突破し、ファイザー製ワクチンの供給が追い付かないほどになっています。接種状況のスムーズな確認を可能としているのが、内閣官房のIT総合戦略室が主導して開発したワクチン接種記録システム(VRS)です。VRSは国の提供するクラウドのシステムで、国内のどこでも市区町村、医療機関、企業等が専用タブレットに接種券(クーポン)を読み込ませれば、接種記録がリアルタイムで把握され進展が確認できます。
従来の仕組みでは、接種情報を各窓口から集めデータを統合整理するまでに2~3カ月かかっていました。今ではその日の入力作業が済めば、その場で確認ができる状態です。効率アップによって未接種の住民が何人いるかがすぐわかるため、自治体を超えてワクチンの余裕分を融通しあうことさえも可能となっています。
このように、クラウドシステムの威力と効果が実証されたことで、各地の自治体ではICT導入についての心理的抵抗感は大きく下がりました。デジタル関連法案は5月に国会を通過しており、法的裏付けを得て、工程を早める見直しも進んでいます。自治体や省庁のICT化はデジタル庁開庁の初頭からアクセル全開でフル加速することになるでしょう。
〈すでに医療業界で進行しているデジタル連携の動きは、
そのまま介護業界に波及する〉
介護業界は隣接する他業界の動きに、ほとんど注目していません。その動きが次に介護業界に押し寄せてこようとは思っていないようです。しかし実際には、今話題のアウトカム評価が先行して医療業界に導入され、効果ありとして介護業界に導入された例もあります。
本連載の第4回にも取り上げた改革工程表2020を思い出してください。
KPIでの指標も、医療介護情報の利活用については「法的・技術的課題が解決したものから順次対応」となっていて、同列に扱われていることがわかります。つまり、"隣接分野の動向もアンテナを張らないといけない"ということです。
2021年介護報酬改定では、居宅支援事業に関連する「LIFE」前提の加算がなかったこともあり、「LIFE」対応へのケアマネジャーの関心はあまりないようです。しかし、次期改定の前にICT化の波がやってくるのは居宅も同じです。
なぜなら、改革の方針である「効率化」「省力化」は、居宅支援がマネジメントする部分を中心に、「文書量半減という形」で最初に進行するからです。

2024年介護報酬改定を待たず、ICT化の波は2022年、2023年と本格化し始めます。
次回は制度改革の方向性のうち「省力化」をテーマに、介護業界においてどのように改革が進められていくかを解説します。
引用・参考文献
1)内閣府:経済・財政一体改革推進委員会社会保障ワーキング・グループ 第39回会議資料 経済・財政一体改革の進捗について(社会保障分野) (令和3年4月27日)、P.3
2)新経済・財政再生計画 改革工程表2020(令和2年〈2020年〉12月18日) |