はじめに
2019年は風水害の多い年になりました。今回は東日本に大きなダメージを与えた台風19号の概要と長野県の事例をお伝えします。
台風19号による人的・物的被害(表1)
2019年10月に発生した台風19号は各地に甚大な被害をもたらしました。台風本体の発達した雨雲や台風周辺の湿った空気の影響で静岡県や新潟県、関東甲信地方、東北地方を中心に広い範囲で記録的な大雨となり、10日~13日にかけて1都12県(静岡県、神奈川県、東京都、埼玉県、群馬県、山梨県、長野県、茨城県、栃木県、新潟県、福島県、宮城県、岩手県)に特別警報が発表されました。
2018年に起きた西日本豪雨(平成30年7月豪雨)では11府県に大雨特別警報が出されましたが、今回の台風19号と同様に広域で甚大な被害をもたらしています。参考に、その人的・物的被害の比較を(表1)にまとめました。

高齢者施設の被害と情報について
今回の台風19号では各地で多くの福祉事業所が被災しました。厚生労働省の12月12日のデータ(表2)と長野県の12月13日のデータ(表3)を見比べると、ほぼ同時期の報告書なのに数が違うことが分かります。筆者は被災地支援の為に被災地の情報収集もおこないますが、このように情報が整理されていない事はよくあることです。災害直後はさらに厳しく、行政といえど正確な情報を一括で持っていることは無いと思った方が良いでしょう。
また、施設の復旧の見通し(軽微な損壊を除く)(表4)をみると3ヶ月で約30%、半年で約85%となり、復旧まで時間がかかることがわかります。

浸水被害と避難のポイント
次に、台風19号で浸水被害を受けた長野県の事業所の例を通じて、「避難のポイント」について考えてみたいと思います。
利用者20名を抱える平屋の入所施設では、80㎝の浸水被害を受けました。夜間に浸水したことで外部からの支援がすぐには到着しませんでしたが、当日の夜勤職員が機転を利かせて机などを並べ、その上に入居者を避難させて難を逃れることができました。その後ボートなどで救出され、系列の福祉施設に避難しケアを継続しています。
「避難時」平屋の施設で上の階への避難(垂直避難)が難しかった
平屋の施設では上階への避難が難しい為、外部への避難も検討しなければなりません。しかし、雨が強くなったタイミングでは避難途中の被災のリスクもあります。雨がひどくなる前のできるだけ早いタイミングで避難できればよいのですが、その場合にも避難側と受け入れ側の双方に負担がかかります。いずれにしても、事前の用意がなければ難しいでしょう。
一方、静岡の障がい者施設では、車で5分の距離にある他法人の施設に一時避難する事例もありましたが、日頃から付き合いのある施設同士であること、また、まだ明るいうちから双方連絡を取り早い段階で避難を開始したことで実現しました。
避難のポイント
・施設のリスクの確認(ハザードマップで確認)
自施設のリスクを把握することで避難が必要か、またどこに避難するべきかわかる
・情報収集(風雨のピークや今後の状況を把握)
リスクが高まりを理解する事で避難のタイミングを逃さない
・避難準備(車両や持ち出し品)
外部への避難には車両が必要
車両以外も最低限必要なものをまとめた持ち出し品(重要書類や薬など)を
事前にまとめておくことも重要
・避難のタイミング(警戒レベル3が基本)
警戒レベル3は「避難準備・高齢者等避難開始」の合図
避難に時間がかかる方の安全な避難のタイミングになる
「避難後」系列の施設があり受け入れ場所となった
施設が被災すると、長期的な避難生活が必要になります。先に紹介した長野県の事業所では系列の施設が受け入れ先になり、避難先での事業継続ができています。
福祉施設を利用している入居者、また職員にとっても避難先の環境は重要です。西日本豪雨や2019年8月に発生した令和元年8月の前線に伴う大雨で公的避難所等に避難を強いられた福祉施設では、利用者が避難所を出てしまい一時行方不明になったり、ベッドが無く介護者の負担増加や転倒事故につながったという事例もあります。
避難先のポイント
・バリアフリーの環境
事故防止や職員の負担軽減につながるため非常に重要
できるだけバリアフリーの環境へ避難する
・元の施設と近い場所
職員の通勤時間に大きな影響を与える
可能なかぎり元の施設の近くで避難できると良い
その他(労務と受援)
表5で示した通り、事業再建には数ヶ月かかることもあります。その中では労務関係の対応も重要です。通勤時間や働いている環境のこと、シフトについても配慮しなければ、職員は疲弊し離職してしまう可能性もあります。その部分を考えると、避難先での事業継続が長期になる場合は外部からの支援の受け入れ(受援)も必要です。
受援のポイント
・外部への広報
被災したことや必要な支援について外部へSOSを発信する
事業所のFacebookページなど既存で活用しているSNSを活用する事は有効
ただし、古い情報の拡散が続き充分足りている物資が届き続ける事もある為、
期限を明記するなど工夫が必要
・受入れ窓口
受入れの窓口を一本化してその際に説明ができるようにする
施設見取り図や一日の流れを説明できるように、施設見学者用の既存の資料を活用すると良い
電話の対応はそれだけで時間を取られてしまうのでメールや
グーグルフォームを使っての窓口の効率化は図りたい
・お願いする業務
支援者によってお願いする業務を予め決めておくとスムーズになる
一般のボランティアでも物資整理、片付けや掃除、炊き出し、シーツ交換など
できることがある為、予め整理して申し出があったときに活用できるようにしたい
まとめ
2018年の西日本豪雨に続き2019年も風水害の多い年になりました。地球温暖化の影響も考えると今後風水害が増える事も予想されます。まだ被災が無い事業所でも明日は我が身とおもい、過去の災害を参考に一つでも備えてもらいたいと考えます。


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