【はじめに】
2019年12月に中国武漢で発生した新型コロナウィルスがパンデミック(感染症の世界的流行)となり、日本も大変な状況となっております。高齢者施設でのクラスター(感染者集団)発生に対し、危機感を高めている方も多いかと思います。まずはこの状況で奮闘されている皆様に感謝申し上げます。
しかし、介護現場の地震や風水害のリスクが減っているわけではありません。もし、この厳しい状況で災害が発生したらどうでしょうか。いつでも、どこでも、誰でも対応できる備えはあるでしょうか。
そこで、今回は新年度に取り組むべき新人職員向け防災教育について、下記4つのポイントをお伝えします。
1.学びのステップについて
2.項目と優先順位
3.各項目の概要
4.目標と計画
現状として新型コロナウィルス対策が最優先かとは思いますが、もしもの備えとして防災教育にも取り組んでいただければ幸いです。
1.学びのステップについて
まず、防災に限らず能力開発にはステップがあることを意識することが大事です。何事も急にできるようになることは難しく、特に未経験者に対しては、「知る」→「わかる」→「できる」→「教える」を意識して人材育成を進めることが重要です。
では、それぞれのステップについて、「食事介助」を例に下記表1に記します。


このステップを意識することのメリットは、目標設定の共有と評価がしやすくなるということです。例えば年度ごと、職員ごとに目標設定をしておくと、年度末に個人の達成度評価ができるようになります(表2)。また、このような防災の目標を事業所全体のキャリアパスに入れておくと、防災の重要性と人材育成の方針を共有でき、全体の底上げにもなります。

2.項目と優先順位
学びのステップを意識しながら、まずは基本的な防災と優先順位をお伝えします。新入職員は初めての環境で働き始め、基本的なケア技術の習得や利用者のことを覚えるなど非常に忙しく、心身への負担が高い状況になっています。防災教育は大切ですが、防災のすべてを一度に伝えることは難しいので、優先順位をつけることが重要です。
表3は、事業種別ごとの防災の優先順位です。あくまで新入職員においてですが、A(必須)B(余裕があれば実施)C(2年目以降でも良い)の順番で示しています。この中で、台風や大雨による浸水や土砂災害などの風水害がB~Cとなっているのには、次のような理由があります。
①施設の立地によっては土砂や浸水害のリスクを考えなくても良いケースもある
②地震や火災などと違い、数日前~数時間前にリスクの高まりを知ることができるため、
事前に施設や法人全体で対策を検討できる
また、移動中や訪問中の対応については、例えば地震では場合によっては職員一人で判断し対応しなければいけませんので、優先順位をAとしています。

3.各項目の概要
次に各項目の概要をお伝えします。各ステップのイメージとそれぞれのポイント(表4)をまとめました。
〈各ステップのイメージ〉
・知る…マニュアルの確認や設備や物品の確認、一連の動作を先輩職員さんがやって見せるなどを通じて知る
・わかる…知っていることをさらに深く理解する。「質問」「ディスカッション」などで深める
・できる…実際に訓練を通して一連の動作ができる

4.目標と計画
具体的なイメージができたところで年間の教育計画を立てますが、ここで注意が必要です。多くの施設ではすでに年間の教育計画を立てていると思いますが、人材育成の目標とリンクしていない所が多くあります。その結果、防災訓練に参加できていない職員が複数名いて、場合によっては2~3年訓練に参加していない、1回もやったことが無いという職員もでてきてしまいます。
そこで、防災に関する人材育成については、その数値目標を立てることをお勧めます。数値目標にすることで、具体的に評価できるようになります。
例)
・全新人職員
○○~○○ができる 100%
・全中堅職員(3年目まで)
〇〇ができる 100%
○○が教えられる 80%
次に、この目標を達成できるように年間計画を立てます(表5)。4月の設備と物品の確認などは、新人オリエンテーションで行う施設の案内と一緒にできますので、他の業務の中に含めながら効率化を図ると良いでしょう。また、新人職員の「知る」~「できる」までのプロセスは、中堅職員の「教える」を向上させる機会となります。この機会を生かして、しっかりと中堅職員も育てていきましょう。

忙しい介護現場では、丁寧に教える機会が作りにくいと思いますが、その場合には動画を撮影して見てもらうことも進めています。特に設備や物品の使用に関しては、その説明や使用方法が変わることが少ないため、一度中堅職員や設備屋関係の業者などと協力して説明動画を作成し、研修資料として運用している事業所も増えています。ぜひ参考にしてください。
【まとめ】
今回は新人職員に対する基本的な防災教育の内容とともに、人材開発のステップや、目標設定や計画についてお伝えしました。防災以外の部分でも参考にできると思いますので、各施設の人材育成の質とスピード向上にお役に立てて頂ければと思います。 |