嗚呼,やりにくい…
会議のザンネンな状況

 さまざまな専門職が働く介護現場では,協働して仕事をする必要があります。誰かと一緒に事を成し遂げるため,あらゆるミーティングや会議が行われていますが,うまくいっていないことも多いように思います。そして,そのような会議は,介護現場に限りません。どんな組織でも,どんな業界でも,困った会議のパターンは共通しています。

 本稿では,さまざまなザンネン会議が少しでもイカした会議になるよう,会議ファシリテーションの基礎と明日から使えるテクニックについて紹介していきます。


ファシリテーションとは

 そもそも,本稿のテーマにあるファシリテーションとは,何でしょうか。

 ファシリテーションという言葉は,「促進する」「容易にする」を意味するfacilitateから転じて生まれたものです。ファシリテーションにはさまざまな定義がありますが,ここでは,「中立的な立場で,チームのプロセスを管理し,チームワークを引き出し,そのチームの成果が最大となるように支援する」1)とします。ポイントは,プロセスを管理するということと,中立的な立場で活動を支援するということです。

 このファシリテーションを担う人が,ファシリテーターです。

事前準備が会議を制す
~会議前の段取り

 「段取り八分」という言葉のとおり,事前にきちんとした段取りをすることがイカした会議への早道となります。次に挙げるポイントに沿って準備をしていきましょう。

基本要素を確認する
~目的は? ゴールは? 議題は? 参加者は? 時間は? 場所は?

 先述したザンネン会議のパターンが発生する理由として,会議の基本要素があいまいなまま進んでいる場合がよくあります。まずは,次のような基本要素を意識しながら会議を組み立てておきましょう。

・なぜ会議を開くのか。目的は何か。
・会議が終わった後,どのような状態になっていたらよいか。
・話し合うべき議題は何か,話し合う順番は?
・決定できる人は誰か,ほかに必要なキーパーソンは誰か。
・日程や時間,場所はどこが適切か。必須出席者は参加しやすい日程か。


会議の大まかな流れと時間配分,決め方を想定する

 会議の基本要素が決まったら,大まかな会議の流れと時間配分を決めておきましょう。それぞれにどのくらい時間がかかるのか,優先順位は何か。準備の時点で,終わりの時間を意識することが大切です。

 また,会議の落としどころについてもあらかじめ想定しておくと,当日なかなか決まらなくて長引くということが少なくなります。

必要な準備を考え,実行する

 ここまできたら,告知や資料の準備をします。もしかしたら,「キーパーソンに根回しをする」「参加要請を念入りに行う」「追加の情報収集をする」といった水面下の動きが必要な場合もあるかもしれません。会議の時間内ですべてを解決しようとするのではなく,どのような"場づくり"が効果的かを考え,事前に準備しておくことが非常に重要になります。

 とかく,ファシリテーターは,会議の中での進行だけに着目される傾向にあります。しかし,困った会議にありがちな状況は,事前準備を念入りに行うだけで解消されるケースも多くあります。

こんな時どうする? 会議の中での困った事例

 しかし,いくら事前に入念な準備をしても,会議中に困った状況は起こり得ます。次に,よくある4つの"困った"状況を解決するための工夫について考えてみましょう。

空気が硬い

【工夫の例】
・何はともあれ,笑顔・笑顔・笑顔
・相づち増量,褒めて褒めて,発言者の味方になる
・時々,自分の表情も意識

 柔らかい空気の中で会議が行われるかどうかは,開始5分で決まります。会議の冒頭で,目的や議題を説明する時も,笑顔で空気をつくっていきましょう。うなずきや相づち,褒めるなど,発言者の味方であることを全身で表すことも大切です。たとえ厳しい議題であっても,穏やかさを忘れず,自分の表情や態度がネガティブになりすぎていないかを意識します。

参加者が発言しない

【工夫の例】
・緊張しない空気づくり
・答えやすい質問をする
・考える時間の提供
・一人一言は発言してもらう
・専門用語の意味を説明してもらう

 会議に参加しやすい・発言したくなる空気感をつくっていきます。例えば,「何か意見はありませんか?」「自由に話してください」など,一見話しやすそうな質問であっても,参加者にとっては何を話したらよいか分からない,見当違いのことを言ってしまったら恥ずかしいなど,発言がしにくい場合があります。よって,「はい・いいえ」や「数値や事実」などで答えられる簡単な質問を投げかけることや,「状況について話してもらう」など,質問を工夫することも一つの方法です。

 また,考える時間を数分提供したり,お隣と話してから発表してもらったりする形をとるなど,とりあえず一人一言は何か発言してもらうようにする方法もあります。発言者の気持ちも落ち着き,その後の話し合いがしやすくなります。

 さらに,専門職が集まった際,その職種では当たり前になっている専門用語や略語が発言に含まれていると,分からない人は意見が言いにくいこともあります。ファシリテーターは意味を知っていたとしても,あえて言葉の説明を依頼すると,全員の理解が得られ,その後の発言がしやすくなるかもしれません。

話が平行線でかみ合わない,まとめられない

【工夫の例】
・それぞれの意見の論点,評価の視点を確認する
・意見のメリット・デメリットを明確にする
・意見をホワイトボードなどで可視化し,違いが分かるようにする

 立場や時間など,発言のレベルが合っていないと,話がかみ合わない場合があります。さまざまな専門職が集まった場合,それぞれの立場ならではの発言で,なかなか落としどころが見えないということもあると思います。

 例えば,「〇〇の立場から見ると~,△△の立場から見ると~,ということですね」などと,意見を比較しながら整理して考えてみたり,それぞれの立場から譲れないポイントを探ったりしていきます。共通のゴールは何か,達成するためにはどのような方法があるかを意識すると,膠着状態を打破する糸口が見えやすくなります。

 また,ホワイトボードで可視化し,それぞれの違いを全員で確認しながら進めていくのも良い方法です。

結局何が決まったのか,会議の後どうなるのかがあいまい

【工夫の例】
・「いつ」「誰が」「何をする」のか,役割分担を必ず決める
・会議の終わりにまとめの時間を取り,決定事項を確認する
・議事録を作成する

 議題がいくつもあった場合,記憶があいまいになったり,何が決まったのか分からなくなったりしがちです。あらかじめ,会議の終わりには決定事項を確認する「まとめの時間」を取っておくことが効果的です。

 また,会議で決まったはずなのに,その後何も動かないといった経験をしたことはありませんか? たとえ,やることが決まったからといって,必ずしも実行されるとは限りません。役割分担を明確にし,継続する会議であれば次回の日程や時間も決め,議事録に明記するようにしましょう。

まずは,実践あるのみ! できそうなところからチャレンジを!

 いかがでしたか?

 会議ファシリテーションは,技術です。上手になるためには,まずはやってみること。会議中の「切り替えしのうまさ」だけがファシリテーションではありません。そして,目的は会議をすることではなく,会議で課題を解決することです。

 会議前の準備を見直したり,決まったことや役割分担を明確にしたりするだけでも,変わってくるはずです。まずは,何か一つでも実践してみてくださいね。

引用・参考文献
1) フラン・リース著,黒田由貴子訳:ファシリテーター型リーダーの時代,P.2,プレジデント社,2002.
2) 下地寛也:コクヨの3ステップ会議術,P.22,23,KADOKAWA,2014.