通所リハビリテーションサービスでは,利用者の重度化防止への取り組み,生活における自立支援の推進が重要視されている。次期,令和3年度の介護報酬改定においても,この2点が通所リハビリテーション(以下,通所リハ)の柱になると想定されている。

 通所リハでは,回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)や地域包括ケア病棟などで提供される亜急性期のリハビリテーション(以下,リハビリ)に比べ,リハビリ専門職(PT,OT,ST)が提供するリハビリの時間数が絶対的に少なくなってしまう現状がある。

 このような保険制度の中で,重度化の防止と自立支援の推進という通所リハの役割を果たすためには,個別のリハビリの質に加え,生活全体に目を向けたリハビリテーションマネジメントが重要である。介護報酬においても,現在,リハビリテーションマネジメント加算は4段階に区分され,医師のかかわりとマネジメントの密度によって報酬が規定されている。

 本稿では,医療法人社団友志会 デイ・リハビリテーションセンター イルカゆかいでのリハビリテーションマネジメントの内容を紹介する。

施設紹介

 当施設は,栃木県の南部の野木町に位置し,大規模の通所リハを提供している。

 同法人内に回復期リハ病棟,地域包括ケア病棟を併設し,法人理念の「この街に住んで関わり合いを持ったときからいつまでも共に生きる」をモットーに,急性期から回復期,生活期へと一貫したリハビリテーションケアを提供している。

リハビリテーションマネジメント加算の算定要件

 当施設では,すべての利用者に対しリハビリテーションマネジメント加算を算定している。リハビリテーションマネジメント加算にはⅠ~Ⅳがあるが,当施設ではⅠとⅢの算定を行っている。

 リハビリテーションマネジメント加算の算定要件は次のとおりである(一部抜粋)。

リハビリテーションマネジメント加算(Ⅰ)

・リハビリ計画の作成,見直しを行うこと

・リハビリ専門職がケアマネジャー(以下,ケアマネ)を通じて他のサービス提供にかかわる事業者に日常生活の留意点,介護の工夫などの情報を伝達すること

・新規の利用者に対して,利用開始1カ月以内に,施設の医師の指示を受けたリハビリ専門職が利用者の居宅を訪問し,居宅の状況の確認,生活機能の評価,指導を行うこと

・施設の医師が,リハビリの実施に当たり,リハビリ専門職に対してリハビリの目的と実施における留意事項,中止基準などを指示すること

・医師の指示に対しリハビリの実施内容が適合することが明確に分かるように記録すること

リハビリテーションマネジメント加算(Ⅲ)
※リハビリテーションマネジメント加算(Ⅰ)の内容に加えて実施する。

・リハビリテーション会議(以下,リハ会議)を開催し,利用者の状況に関する情報,目標設定を利用者,家族,各職種で共有し,会議内容を記録すること(会議後の記録の複写を家族,担当のケアマネにFAXにて送付している)

・リハ会議は計画の同意を得た月から6カ月以内は1月に1回以上,それ以降は3月に1回以上実施すること

・利用者またはその家族に対して医師がリハビリ計画の説明を行い,利用者の同意を得ること

リハビリテーションマネジメントのポイント

 当施設では,次の点をポイントとしてリハビリテーションマネジメントを行っている。

回復期リハ病棟との連携

 当施設系列の回復期リハ病院入院中より通所リハでの介入を見据え,活動性の向上,生活範囲の拡大に寄与できる目標設定を行っている。その目標に合わせ,退院前にリハビリを提供すると共に,通所リハ実施計画書の内容に則した「連携シート」を作成し,回復期リハ病棟から通所リハへの情報共有を図っている。

 回復期リハ病棟の退院決定時には,回復期リハ病棟のチームリーダーのリハビリ専門職と通所リハの管理者(理学療法士)の間で書類,口頭での申し送りを行い,通所リハの利用回数などを決定している。

 回復期リハ病棟退院後のリハビリ提供内容としては,自宅でのDVDプレイヤーの操作も含めたDVD鑑賞の自立や競輪観戦に行くこと,公共交通機関を利用した外出の実施などの機会を得ている。

目標に対する重点的なリハビリの介入

 生活範囲の拡大,参加と活動を目標となる利用者に対して,その活動に即したリハビリを行えるように情報共有を行っている。対象の利用者に対してファイルを作成し,日々のリハビリ介入に関する記述を行い,リハビリの内容を共有できるように工夫している。記述の際は,課題に対して直接的なリハビリを提供することをスタッフ間の共通理解としている。

 リハビリの実施において,特に経験の浅い専門職は,筋力の改善や麻痺の改善など機能回復を目的とした介入に終始しがちであるが,なるべく実際の生活場面を再現することで,参加と活動の機会が増えていくような介入が可能となると考えている。

 このような内容を踏まえたリハビリを提供することで,リハビリ室内でギターを弾いていたり,社交ダンスへの復帰を目標にリハビリ専門職とルンバを踊ったりしている利用者が見られる。

介護職による運動機会の提供

 当施設の課題として,個別リハビリは充実しているが,それ以外の時間に実施する内容が不十分であるとの意見が多く聞かれていた。この課題を解決するために,相談員を中心に平成31年より介護職による自主トレーニング(以下,自主トレ)の指導を開始している。リハビリ専門職と介護職のグループをつくり,情報共有を図りながら介護士による自主トレを実施している。

 屋外歩行や立ち上がり動作,エアロバイクの実施確認,失語症・構音障害の利用者と大きな声であいさつをするなど機能的な内容も含むものとなっているが,個別リハビリでは不十分な運動量を増やす重要な機会となっている。

 リハビリ専門職からも自主トレの効果をフィードバックすることで,介護士が忙しい業務の合間に自主トレを行うためのやる気を維持できるように工夫している。

事例紹介

Aさん,60代,男性
要介護4
障害高齢者の日常生活自立度:A1
認知症高齢者自立度:Ⅰ

【家族構成】
 妻と2人暮らし

【住居環境】
 公営住宅の2階(エレベーターなし)

【病前の生活】
 シルバー人材センターにて駐車場管理の仕事を受けており,老人会にてレクリエーションサークルや傾聴ボランティアに参加していた

【病歴】
 X年Y月初旬(病歴0日) 腰痛,両下肢筋力低下により発症。脊柱管狭窄症の診断
 病歴7日 外科的治療施行
 病歴21日 回復期リハ病院入院
 病歴56日 回復期リハ病院退院
 病歴87日 当施設利用開始

【利用開始時の状況】
 施設内歩行はシルバーカーにて自立,短距離の歩行はT字杖にて自立,ADLは入浴以外自立レベル,コルセット使用

【利用開始時の希望】
 妻と旅行に行く

利用開始の経緯

 回復期病棟への入院中から,退院後の参加・活動レベルの目標設定を行い,介入を進めてきた。具体的には,最終的な目標である妻との旅行を見据え,屋外歩行距離の延長や集合住宅における外出のための階段昇降の獲得などを目標としてリハビリを展開していた。

利用の経過,マネジメントのポイント

 リハ会議の展開

リハ会議1回目(資料1

 当施設内の移動はT字杖にて可能となった。しかし,階段昇降において後ろ向きでの降段となっており,本人からは2km程度は歩けるようになりたいとの希望が聞かれた。階段昇降自体は妻の見守りで行えるとのことであったため,家族との散歩を行うようにアドバイスした。


リハ会議2回目(資料2

 この段階で,屋内外歩行はT字杖にて自立となった。主治医の判断によりコルセットの着用も終了となっていた。妻とコミュニティバスを利用し最寄駅まで行き,鉄道により近くのターミナル駅まで出かけたとのこと。また,歩いて20分程度の距離にある公衆浴場へ行ってみたいとの新たな希望も聞かれた。

 Aさんの歩行能力に対する妻の理解も進んでいると判断した。本人の心配事としては,駅での階段昇降やエスカレーター,鉄道,バスから降りる際の段差などが挙げられた。

 長距離歩行後に腰部や股関節の疼痛があるとのことであったため,疼痛のマネジメントを継続的に行っていくこととした。


リハ会議3回目(資料3

 外出は継続できており,本などを購入してストレッチを行っているとのことであった。階段昇降も疲れにくくなってきているという話で,体力の向上をうかがわせた。ジョギングができるようになるとよいという目標が聞かれた。

 また,上肢機能について,前腕が回内してしまうため,湯のみ茶碗や味噌汁茶碗が持ちにくいとの訴えがあった。上肢機能の改善にも継続的にかかわっていくこととした。


 居宅調査

 リハ会議の過程において,担当ケアマネより,妻が歩行距離の延長に対して危険を感じているとの情報提供があった。そのため,ケアマネ同席で居宅調査を行った。

 妻からは,Aさんの転倒の危険性が高いこと,転倒したら寝たきりになってしまうという不安についての訴えがあった。そこで,妻に対し,当施設内での歩行能力の改善について説明すると共に,階段昇降の練習を継続していくことを説明した。また,退院後の運動量の低下が心配されるため,最初は心配でも少しずつ一緒に出歩くようにしてもらうことをお願いした。また,最終的にAさん本人が妻と旅行に行くことを目標としていることを話した。

 妻は,Aさんの屋外歩行や階段昇降の様子をほとんど見たことがなく,Aさんの能力の把握が不十分であったため,歩くこと,階段昇降を行うことへの不安が大きくなっていた。また,廃用症候群に関する知識も不十分であった。Aさんの能力について説明し,自宅で何もせずに過ごすことのリスクを伝えることで,運動量を増やすことへの理解が得られたと考える。

 自主トレーニングの展開

 利用開始時には,リハビリ室での階段昇降の練習について介護職による実施確認を行い,また歩行器を使用し300m程度の屋外歩行を介護職の見守りの下で行っていた。次月には,階段昇降の練習実施の確認は継続し,屋外歩行は歩行器からT字杖での実施となった。次々月には,歩行能力のさらなる向上により屋外歩行が自立となり,屋外歩行を行ったかどうか確認するのみとなった。

 このように,リハビリ以外の練習量を継続的に確認することで,Aさんのモチベーションの強化にもつながり,活動量を段階的に増やすことができ,それにつれて歩行能力が向上したと考えられる。

事例のまとめ

 Aさんのリハビリテーションマネジメントにおいて特に意識した点は,運動量増加の確認と家族への障害・回復過程の理解の促しである。運動量のマネジメントは,介護職との歩行練習の実施を中心に,利用時間全体での活動量が維持できるようにかかわった。

 また,利用の経過により,妻の不安が鮮明になってきた。この不安を解消し,屋外歩行機会の増加への協力を仰ぐため,ケアマネ同行での居宅訪問を行い,妻への説明を行った。その結果,妻の理解も得られ,自宅での行動範囲を拡大することができた。

 このように,リハビリテーションマネジメントの観点において,直接的な個別リハビリの提供に留まらず,利用中のリハビリ以外の時間の過ごし方や,自宅で行うべきことも見据えてマネジメントしていくことが非常に大切であると感じている。

まとめと今後の課題
―新型コロナウイルス感染拡大下における対応

 現在,新型コロナウイルスの感染が拡大しており,当施設でも対策を実施している。内容としては①利用者,スタッフの検温,手指消毒,マスク着用の徹底,②面会の中止,③リハ会議へのケアマネ,家族の出席の取りやめと文書での照会の実施,④利用者間の飛沫拡散防止のためのパーテーションの設置,⑤居室,送迎車の換気の徹底などである。このような状況下において,感染対策を徹底した上で家屋調査を行っていることを申し添えておく。

 コロナ禍において,ケアマネや利用者の家族との接触をなるべく避けなければならないため,情報共有が困難となってしまう場面が多く見られる。必要に応じて,適切な感染対策をとりながら情報共有を進めていくことが重要である。