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1. 感染爆発の重大局面と家族の不安感増大

 中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染は全世界に拡大しています。日本も例外ではなく、都内では連日100名を超えた感染者が報告(4/4.5の感染者)され、安部総理大臣は、202047日東京など7都府県を対象に「緊急事態宣言」を行いました。新型コロナウイルスの感染者急増を受けて、東京都では小池都知事から商業施設や娯楽施設など幅広い業種に営業時間の短縮や停止、不要不急の外出、イベント、飲食を伴う集まりの自粛要請が行われています。

 当施設ではこの状況下においても超強化型老健の施設基準を維持すべく努力中です。コロナ騒動が在宅復帰にどのような影響が出ているか、実際の事例を基にその経験の一部を提示します。

2.老健における在宅復帰への影響

例1) 家族からの在宅復帰延期要請
 3月26日午後、3月末に在宅復帰を目指し調整を行ってきた家族より、入所期間の延長相談の電話が入りました。「在宅復帰した後に感染拡大となり突然デイサービスが利用できなくなった場合に生活が成り立たなくなるので、コロナ騒動が落ち着いてから復帰させたい」との相談でした。実際に名古屋市の一部地域のデイサービスが事業停止した事例が発生した後でもあり復帰は延期としました。

例2) 有料老人ホーム入居延期
 山梨県に親族がいる利用者が、親族の近隣の有料老人ホームに3月中の入居を目指し移動を予定していましたが、3月27日に本人面接や入居のための移動は一時見合わせとの連絡が入りました。

 当施設は超強化型の老健施設として運営していますが、3月に予定していた在宅復帰対象のうち上記2件が実現しない事態となり、急ぎ在宅復帰・在宅療養支援等指標のポイントの再計算をしたところ3月単月での在宅復帰率が達成できない計算結果となりました。

3.施設基準の臨時緩和

 このタイミングで、厚生労働省老健局から3月26日に「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて(第5報)」として「介護保険最新情報Vol.796」(※1)が通知されました。Q&Aの問1では、都道府県等が、公衆衛生対策の観点から自粛を要請した場合、「算定日が属する月の前6月間」等の指標の算出に当たって使用する月数に、その月は含めなくともよいとするものでありました。

問1 都道府県等が、公衆衛生対策の観点から入所又は退所の一時停止、併設サービスの事業の全部又は一部の休業等を要請した場合、介護老人保健施設の基本施設サービス費及び在宅復帰・在宅療養支援機能加算に係る施設基準において、「算定日が属する月の前6月間」等の指標の算出に当たって使用する月数に、その期間を含む月は含めないとする取扱いは可能か。

(答)可能である。

 保険者である世田谷区の担当者にさっそく相談したところ、担当者からは、前述の2件の事例について都知事の自粛要請も出ているので、許可権者である東京都が了承していれば認めるとの回答を得ました。

 そこで次に、東京都の担当者に連絡しました。

 最初の交渉では、都の担当者の見解では、問2の答に「新型コロナウイルスの感染の疑いや濃厚接触の疑いがない者の入退所については、地域の感染状況も踏まえながら従前とおり行うように努めること。」とあるように、家族や施設側が心配だからということだけであるならば認められないとの立場でした。交渉過程で判ったのは"感染の疑いがある"ことが要件ということから、"疑い"のみで可能とのことでした。

問2 介護老人保健施設が感染拡大防止の観点から特に必要と考えられることから、自主的に入所又は退所の一時停止、併設サービスの事業の全部又は一部の休業を行った場合、問1と同様の考え方でよいか。

(答)貴見のとおり。ただし、入退所を一時停止する期間及び休業する理由を事前に許可権者に伝えるとともに、記録しておくこと。
 なお、新型コロナウイルス感染の疑いや濃厚接触の疑いがない者の入退所については、地域の感染状況も踏まえながら従前どおり行うよう努めること。

 そこで論点を切り替え、世田谷区内では2~3月にかけて当施設の数百メートル範囲内で感染者が散発的に発生しており、報道でもあるように新型コロナウイルスの感染者の80%に自覚症状がなく、数週間ウイルスのキャリアとなることが知られていることを上げ、これを根拠に、①当施設では、現在、利用者・職員ともに発熱・風邪症状などが出ている者はいないこと。②PCR検査など行う状況ではないが、無症状なままで日常生活や業務を続けているだけの可能性も否定できず疑いはある状況だ。③感染爆発の重大局面で、山梨県の有料老人ホームが、東京方面からの入所者を控えていること。④在宅生活を再開した後で利用者が自宅で発症して、デイサービス利用が出来ず抱え込むことで生活が破綻することは避けたい、ということを理由として、再度相談したところ、都の担当者から事例を認めてもらうことが出来ました。

 今回の「介護保険最新情報 Vol.796」の施設基準の臨時緩和を要請する際は、以下の留意点に沿って、各都道府県、保険者に確認してみてください。

施設基準の臨時緩和を要請する際の留意点
Ⅰ.都道府県担当者への連絡
 ①都道府県の知事から自粛要請が出ていること。
 ②地域の感染者発生状況を伝え
 ③②の疑いから自覚のないまま無症状の職員・利用者に感染者が発生している可能性は
  否定できない状況の中で、一時的に一部退所を停止したことを伝え承認を得る。
 ④該当利用者のカルテに記入。連絡の事実を記録して保管。
Ⅱ.保険者(市区町村)の担当者に連絡
 ①知事からの自粛要請が出ていること。
 ②許可権者の担当者に連絡・了解が取れていることを伝え承認を得る。


4.コロナショックにおける対応のまとめ

対応は1年レベルとなる様相

 今回の新型コロナウイルス感染症は、現在のところ自粛に協力すれば、季節性インフルエンザの様に流行の時期が過ぎ、収束するとの見通しは楽観的に過ぎるようです。1年以上の長期戦となる覚悟が必要なことが以下の点から考えられます()。

熱帯地域の東南アジアでも流行・蔓延しているように、日本が夏になっても終わらない可能性があること。

マスクや手洗いといった標準予防策、人的交流の抑制は苦行だが、流行の爆発的スピードを遅らせる対応に過ぎず、医療崩壊を食い止めるほど有効な対応とはいいがたいこと。

収束のためにはウイルスへの免疫力を上げる必要があるとされているが、ワクチンの新規開発には5~10年程度必要との見解もあり、これを1年に短縮する努力が続けられているが、 治験・副作用確認といった手順をはぶくわけにもいかない。10億人規模のワクチン量産・配布開始は来年上旬の見通しと思われるため即効性に乏しい。

老健は病院の後方支援としての役割を期待されている

 今後さらに病院も入院協力要請に備え、通常の入院患者の退院受け入れ先を通常より多く求めることが予想され、新規利用者の相談も増えると予想されます。

 老健は在宅復帰の施設ですが、今回の施設基準の臨時緩和は、高齢者の一時預かり先として、社会的要請に協力することで貢献することを求められていることを示しています。つまり、施設基準は据え置き、最大限で預かり機能を発揮することになります。昨今、超強化型・強化型の老健では、入所率の低下による経営悪化傾向にありましたが、今回の状況は結果的にプラスに働く側面も併せ持つ可能性があります。

 さらに、症状が安定している利用者に対しては、病院受診による感染リスクを回避する目的で、電話再診のみで処方箋の交付や処方日数の延長などが認められているため、施設入所に際して施設持ち出しの薬剤コストが一時的にも軽減する結果となっています。(※2)

 一方で、この間、面会・外出制限を行う施設も多く、利用者・家族のストレスも上昇しています。職員においては感染予防対応でのマスクや消毒などの手順の増加で作業量が増加、不幸にしてPCR検査で陽性者が出た場合には症状の有無に関係なく自宅待機や入院加療が求められています。この結果、さらなる人員不足の中で業務がより厳しくなることにも対応せねばなりません。そのためにもより一層の業務効率化が必要です。

 新型コロナウイルス感染対策で日常業務以外でも多忙を極めるこの時期だからこそ少しでも業務の効率化を行い職員の負担軽減につなげる対策が必要と思われます。

 今年度も2019年度に引き続き、ICTや介護ロボット導入に対しての補助事業や人材不足に対する処遇改善事業、外国人実習生採用事業など様々な方面からの対応にも目を向けて、取り組む良い機会と捉えることも必要でないでしょうか。

引用・参考文献
1) 新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて(第5報)Vol.796厚生労働省老健局 (令和2年3月26日)
2) 新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取り扱について(その2)厚生労働省保健局医療課 事務連絡(令和2年2月28日)