●連載にあたり
人材不足や離職率が高い、残業が多い、1人の業務負担が多いなどの課題を抱えている介護施設では、そのほとんどが週休2日制を採用しているのではないかと思います。
一方で、その課題解決に向けて週休3日制を導入する施設が少しずつではありますが増えてきました。筆者が知る範囲では、独自に週休3日制を導入している介護施設(有料老人ホーム・サービス高齢者住宅等も含めて)は全国で約50施設程度と認識しています。
この連載では、週休3日制のメリットやその導入プロセスを細かく説明しながら、皆様の介護施設に週休3日制を導入するお手伝いをさせていただけたらと考えています。
●介護施設の週休3日制って何?
週休2日制の場合、週の勤務時間は次のように計算することができます。
(週休2日制)
1日8時間勤務×5日=週40時間勤務/2日休み
これに対して、週休3日制では、多くの方が次のような計算を想像するのではないでしょうか?
(多くの人が想像する週休3日制)
1日8時間勤務×4日=週32時間勤務/3日休み
現在、介護施設での導入され始めている週休3日制では、次のように週の勤務時間を計算します。
(介護施設で導入され始めている週休3日制)
1日10時間勤務×4日=週40時間勤務/3日休み
週休2日制を導入する介護施設では、そのほとんどが「1か月の変形労働時間(※1)」を採用されているようです。したがって、週休2日であっても週休3日であっても「週に40時間勤務」ということは変わらず、就業規則上でも問題ないという事になります。
※1:1か月の単位の変形労働時間制
1か月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間以内となるように、労働日および労働日ごとの労働時間を設定する。これにより、労働時間が特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間を超えたりすることが可能となる。 |
●介護施設での週休3日制導入の背景
ご存知のように、入所型の介護施設では24時間体制で365日入居者を支援します。そして、その支援を途切れさせないために、職員が基本的に3交代制(早番・遅番・夜勤)で勤務していると言う実態があります。
しかし、全国的な課題として「介護施設での慢性的な人材不足」があり、既存職員の頑張りで運営している介護施設がほとんどなのではないでしょうか。筆者自身も、以前施設長をしていた特別養護老人ホーム(宇都宮市・横浜市2か所)で同じ悩みを抱えていました。
本稿で紹介する週休3日制のアイディアは、当時、筆者が仲の良い他法人の本部長と人材不足解消の方法について話し合う中で生まれました。
「同じ1週間40時間の勤務でも、8時間×5日で2日休みではなく、10時間×4日で3日休みにしてはどうだろう」
これを施設に持ち帰り、検討したのが「介護施設での週休3日制導入」の始まりです。週休3日制は大手一般企業での導入例があり、良いアイディアだとは思ったのですが、同時に「介護施設で本当にできるのか」という不安もあったことを覚えています。
その後、具体的なシミュレーションを経て(参考資料:勤務時間割比較表)、平成28年6月より全国で初めて介護施設での週休3日制の導入・運用に至りました。次項より、介護施設での週休3日制導入の背景やその状況について、より詳しく説明していきます。
[ 参考資料:勤務時間割比較表 ]
●職員配置/形態による課題
現在の介護施設では、「ユニット型」や「従来型」、「ユニット型と従来型のMIX型」など様々な形態で入居者を支援しています。筆者が施設長を務めていた介護施設でもユニット型で支援していましたが、週休2日制を採用する中で次のような課題が生じていました。
〈週休2日制とユニット型(国が推奨しているので全国の約半数はユニット型)の課題〉
①職員一人当たりの業務負担が多い
週休2日制では3交代勤務が基本なので、ユニット型では前後の勤務者と被る勤務時間が少なく、1人で作業する時間が多くなる。そのため、気持ちに余裕がなくなり、ストレスや不安を抱えやすく、1人の業務負担が多い。この状況が長く続くと、虐待に繋がりかねない。
また、入浴対応や記録が終わらないなどの理由から、毎日平均2時間程度の残業が発生していた。
②事故のリスクが高まる
前述の業務負担に加え、居室(個室)内で介助していると職員がフロアーに誰もいなくなる時間帯が生じてしまうこともある。その結果、「介助中」を理由に他の入居者への配慮や見守りが行き届かなくなり、転倒などの事故のリスクが高まっていた。
③新人指導・教育の難しさ
週休2日制では職員の勤務が被る時間が少なく、新人の独り立ち後は、先輩職員と勤務が被る時間が少なくなり、業務中に指導を受ける機会が減る。そこで得られたであろうスキルを研修で補うのは難しい。
また、ベテラン職員によるOJTの機会が少ない事は、介護の質が上がらない要因の一つとして考えられる。
④時間調整が困難
週休2日制では勤務パターンは多いが、協力ユニットとの兼ね合いで実際に早番・遅番・夜勤の時間調整は難しく、変更の実績もない。また前後の勤務者と勤務時間が被らないので、現実的でない。
さらに、「効果的な研修・会議の開催」を目的として、それぞれを勤務時間内で実施するというルールで取り組んでいたが、必要な全体研修(年2回実施は必須)以外での内部研修やフォローアップ研修・外部研修の出席などの実績が積めていなかった。
⑤精神、身体的負担
週休2日制では(夜勤8時間)夜勤明けが公休に含まれる為、精神的にも身体的にも休まらない 。その結果、外出支援や食事レク、委員会などの取り組みに対しても、意欲的でなくなっていた。
内容によっては全然進まない事もあり、それに伴いやりがいにも繋がらない。入居者のアセスメントも充分にできない状況であった。
⑥早番・遅番の回数の偏り
週休2日制では、勤務状況により早遅勤務に対しての偏りが生じてしまう場合がある。職員から不満が出ることも多かった。
⑦入居者本位のケアができない
週休2日制では、早遅勤務の関係で職員の勤務状況に入居者の生活自体を合わせなければならない現状がある。実践における矛盾を感じている。
例えば、入居者の希望による同性介助に対応できない、週2回の入浴についてスケジュール調整が難しいなどのように、入浴実施が滞ることが多い
⑧週休2日制3交代勤務に対するマイナスイメージ
ハローワークや職員紹介のほか、様々なメディア等に職員採用の広告を出しても、人材確保ができない。また、入職しても1日・1週間等短期で離職する職員多く、人材定着に繋がらない。
他にもありますが、以上のような主な要因で週休2日制だと課題解決方法が見つからず、何年も同じ課題を抱えていました。何か具体的な対策と課題解決方法が必要であるという背景が有り、週休3日制導入の検討が始まったのです。
●介護施設での週休3日制導入の現状
平成28年6月に全国で初めて週休3日制を介護施設に導入・運用した経験から、筆者は社協・老施協・推進協・介護労働安定センター・厚労省(平成29年度 老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業の中)等での講演・講義、また雑誌寄稿などで、介護施設での週休3日制導入のメリット・デメリットを紹介しました。
その後、施設(宇都宮市・横浜市2か所)では全国から見学や相談の依頼を受け、聞きに来られた方々にアドバイスをさせて頂きました。その結果、週休3日制を導入してから1~3年経過し、現在もうまく運用されている介護施設が全国で10~12施設程あります。
繰り返しになりますが、週休3日制は24時間365日稼働している介護施設・現場には非常にマッチした仕組みだと思います。次回以降、そのメリットをふまえながら、導入プロセスから運用に至るまで、細かく説明させて頂きたいと思います。
すでに週休3日制を導入した介護施設では、80~90%の職員が「元の週休2日制には戻れない」と言っています。週休3日制の導入は介護のイメージを変え、他業種からの入職を増やす手段にもなると確信しております。
本稿を週休3日制導入に向けた検討材料として、活用頂けると幸いです。 |