私がこれまでレクリエーションを提供してきた中で,意思の疎通が図れなくなってきている中重度の認知症の利用者にかかわる時に大事だと思ったコミュニケーション技法をいくつかまとめてみました。
認知症で記憶に障がいがあり,名前や顔を憶えられなくても,感情を伴った記憶は残りやすいと言われています。相手に不安や不信感を与える言葉かけや態度は慎むことが大事です。イメージで「あの人は信頼できる」と安心感を持っていただくことが必要です。
認知症の人でも,「笑顔」は認識しやすいと言われています。認知症ケアは合わせ鏡とも言われますが,こちらが疲れ果てイライラしていると相手も不安になってきます。不安が募るとレクリエーションどころじゃないですよね。笑顔で余裕のある態度がコミュニケーションをスムーズにしてくれるのですね。
認知症が進むと,視野が狭くなると言われています。遠くから誰かが話しかけても,どこから声がするのか分からなくて不安になったり,急に誰かが近づいてきて(相手は視野に入っていると思っているので普通に近づいているのだが)驚いてしまったり…。そんな怖い思いをしているなんて思いもよらなかったですよね。相手の視野に入ったかを確認して(相手と目線を合わせる,手を振り反応を確認する)それから言葉をかけるようにしましょう。
レクリエーションに限らず,参加したくないのに無理やり参加させることは本人を苦しめることにつながります。皆の笑い声が楽しそうで様子を見に来る,その時に「一緒にいかがですか?」と誘うという,自然で自由な雰囲気をつくりましょう。
言葉の意味が分からなくなっている人に長い説明をすることは,外国語で話しかけているようなものです。短い言葉でゆっくり,はっきりと話しましょう。「ごはんです」「ボール,投げますよ」のように,1~2語をゆっくりと話します。
職員「ごはんができましたよ」
利用者「船に乗って行っちゃったから」
職員「船に乗って行っちゃったんですねぇ。きっとすぐ帰ってきますよ」
もし,このように会話が成り立たなくても,困った顔や無視をせず,相手の言葉を反復し受け入れることで相手が安心してくれることが多いです。その後に,「食べましょうね」とお膳を置いて,食事を楽しんでもらうようにしましょう。
認知症が進むと,「自分の置かれている状況」が分からなくなってくる人がいます(これを「見当識障害」と言います)。
「槍のお稽古が始まるから出かけます」(太平洋戦争中だと思っている),「赤ん坊におっぱいをあげなくちゃ」(産後だと思っている),「明日の朝,会議があるから」(会社勤めをしていると思っている),「子どもが学校から帰ってくるからご飯の支度をしなくちゃ」(自分が30代だと思っている)などと言う人に「レクリエーションゲームをしましょう」と誘っても,「そんなことしている場合じゃない」と断られてしまいます。
こういう場合も,相手の気持ちを尊重しましょう。私の場合は,「槍のお稽古は来週に延びましたよ」「赤ちゃんはまだ寝ているから30分くらいゆっくりしていきませんか?」「会議の準備はもう終わっているからちょっと体操でもして体を動かしましょうよ」「今日は,おばあちゃんが晩ご飯を作ってくださるって」などと言って,レクリエーションゲームにお誘いしてしまいます。
要は,「あなたは,今ここでちょっとゆっくりして大丈夫なんですよ」というメッセージが届いて相手が納得してくれればよいということです。「あなたは今,30代だと思っているようだけれど,実は90歳で,お子さんも70代なんですよ」なんて説得したところで,相手は混乱するばかりということです。
ただ,中には,ヒントを出したり,正直に言ったりすると「分かった」と納得する人もいますので,その利用者の性格や認知症の進み具合を勘案して対応するようにしましょう。守っていただきたいのは,「言葉がけ」の統一です。A職員とB職員が違うことを言うと混乱しますので,チームで言葉がけや対応を統一しましょう。